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【Genocide Numbers】

Act.6

「……次は私が行く」
「!」
カーネイジの出撃から一晩明け、次の日の朝。
壁際に座りこんで充電していたNo.4が、開口一番そう言った。
「そ、そうか」
日頃から積極的に喋らない彼女からの申し出に、常日頃は冷静なNo.3も若干戸惑いを感じた。
「……何か理由があるのか?」
「無い……何か問題が?」
きっぱりとそう言い切られ、No.3も答えに窮した。
同じ機械種族でありながら、No.3はNo.4にどこか異質なものを感じていた。
彼女の行動原理が読めない。
かと言って、イレギュラーという訳ではない。
No.3にとっては、非常に対応の難しい相手であった。
「い、いや、無い……。
 ではNo.4、出撃せよ」
「了解」
「服いるかナ?」
No.4が声の方を向くと、出撃準備室からドゥームが顔を出していた。
手にはドレスらしきものを持っているが、No.4は首を振った。
「大丈夫、“自前”で用意出来るから」
「ああ、No.4はそうだったネー」
「じゃ、行くよ……」
No.4は両腕を広げる。
一同の見ている前で、常識を覆す変化が始まろうとしていた。

<『蒼血』分解開始>
ブレインが全身に命令を走らせた途端、彼女の右手が持っていた鎌が『溶けた』。
輪郭を失い、水銀状の青く光る液体に変わったと思うと、それは手から吸い込まれて行く。
<『蒼血』再構成>
<形状:衣類>
次は全身へと命令を送る。
ウェットスーツのような体の表面が同じように溶解し、自在に形を変えて行く。
やがて液体は髪や顔を覆い、その形状を変化させる。
「いつ見ても見事だネェ」
ドゥームが頷きながら、その光景を見詰めていた。

これがNo.4の能力である。
No.4の体は、他のDEMとは全く異なる方法で形成された。
超微細な有機CPUから成る『蒼血』と呼ばれる液体が、彼女の体の大部分を構成している。
それをテニスボール大のコアユニットからの命令で操作し、体を自由自在に造り変える事が可能なのだ。
言ってしまえば、No.4の本体はコアユニットだけなのである。

「変身完了……」
容姿の変化は、十数秒で完了した。
「…………」
皆の見ている前で、No.4の体は確かにヒトと区別が付かないほど完璧に変身を遂げていた。
だが、誰もが黙っているのは、そのせいではない。
「……No.6、あれは普通の格好と言えるのか?」
たっぷり十秒間沈黙を保った後、No.3がドゥームに小声で尋ねた。
「あー……普通、じゃないと思うヨ……」
ドゥームにしては珍しく、歯切れの悪い返事だった。
その会話を聞きつけて、No.4が不思議そうに尋ねた。
「……何か?」
「あのさ、No.4……」
小首を傾げているNo.4に、一歩近づいて、ドゥームが恐る恐る尋ねる。
「なんで…………青い全身タイツなのかナ?」
体にぴったりフィットとした全身タイツ。
ご丁寧に頭まですっぽりと覆われ、顔だけ出ている有様だ。
「元のボディに一番近い装備を検索したら、これが該当した。
 ……言いかえるなら、楽だから、これにしちゃった」
「……ああ、ソウ……非常に合理的でよろしいネ……」

その後、ドゥームの見立てで何種類か衣装を変えてみた。
しかしどうも『青くて薄手の装備以外は手間がかかる』との事で
協議した結果、結局落ち着いた姿が――
「ロングパレオ水着かァ……」
「……似合う?」
上下白のビキニに、海をあしらった長い水色のパレオ。
素足はおかしい、と脚には白いプレーンなロングブーツ。
そして髪はマシナフォームに合わせて水色のロングポニーテールである。
当然だが、水着なので露出は際どい。
背中は丸見え状態だし、パレオの隙間からは太ももが完全に露出していた。
「似合う……ケド……」
今は12月である。
そうツッコミを入れようとしたが、時間が勿体ない。
服を決めるだけで、既に30分経過していた。
「そろそろ、出撃して貰えるだろうかNo.4……」
「了解、No.3」
流石に焦れたらしいNo.3が、催促をかける。
それに涼しげな顔で答え、No.4は小型飛空庭に乗り込んだ。
「No.4……No.2処理任務、出撃します」



遠ざかる庭を、心配げに見つめるNo.3。
彼の中では、既に『作戦の成功率:極めて低』と見積もられていた。
「……」
「行ったネー」
「……No.6、支援はできるか?」
「任せてヨ。No.7の作ってくれた地図のお陰で、誘導くらいは出来そうだヨ」
コンソールの操作を開始するドゥーム。
それを見て、作戦の成功見込みを幾分上方修正したNo.3は、次の仕事に移った。
「No.7、こちらに来い」
「なんですか?」
部屋の隅でぽつねんと座っていたカーネイジが、立ち上がりつつ返事をした。
「模擬訓練を行う――No.7は戦闘経験を積まねばならないからな」
愛用の槍を片手で持ち、軽く素振りをする。
円錐型の大槍が小気味いい音を立てて空を切った。
「よ、宜しくお願いします!」
「頑張ってね、No.7」
壁際に腰かけたヴィソトニキも、カーネイジにエールを送る。
その光景を優しい目で見るNo.6。
いつにない、穏やかな時間が、流れていた――



『No.4、聞こえるー?』
アクロポリス西可動橋に到着したNo.4の耳に、ドゥームから通信が入る。
『若干ノイズが入るけど、聞こえてるよ。
 どっちに行けばいい?』
No.4の前で、道は上下に分かれている。
一つは、アップタウンへ続く中央の入口。
もう一つは、ダウンタウンへ続く二つの階段。
『ちょっと待ってネ……』
<サーチ:GN002P>
ベースのドゥームは、脳内メモリにレーダー画像を展開する。
彼女のビット型レーダーが回転し、アニキの位置を大まかに絞り込む。
距離があるので精度に何はあるが、それでもおおよその位置ぐらいは掴む事が出来た。
<サーチ終了...ターゲット現在位置:アップタウン北西部>
数十秒で、高い電子音と共に結果が表示された。
その一行を見て、ドゥームはNo.4に伝える。
『ダウンタウンの南東部に向かってみてヨ』
『了解』


ドゥームは嘘を吐いた。
そしてダウンタウンには通信が入らないから、と言って強引に切った。
「ふぅ……計画通り、っと……」
ナビゲート用のプログラムを閉じ、ドゥームは一息ついた。
アップタウン北西部と、ダウンタウン南東部――まさに対極に位置する場所。
これで、No.4とアニキがはち合わせる心配は無くなった。
後は……No.4――がどんな経験をしてくるか、だ。
「楽しんでくるんだヨ、カラミティー」
3人には聞こえないよう、開発名でドゥームは呟いた。



「(……この近辺か……)」
ダウンタウン南東。
ドゥームの指示通り、No.4はダウンタウンを大きく回って移動していた。
前回調査に因ると、近くにはエレキテルラボなるDEM専門の研究施設があるらしい。
これは厄介である。
No.2が中にいた場合、No.4では手の出しようが無い。
仮に外に居たとしても、無関係なDEMが多過ぎて捜索が一苦労である。
「(とりあえず、サーチしてみよう)」
No.4はコアに装備された索敵装置を起動。
No.6のビットに比べると大分劣るが、半径50メートルくらいのDEMの情報ならある程度分析が出来る。
No.2が引っかかれば、それと気付く筈である。
だが、サーチ結果を示す画像には、案の定DEMの反応が無数にある。
殆どがNo.4にとって関係の無いDEM。
評議会の登録信号を発しているDEMを、とりあえず片っ端からチェックし消してゆく。
「(……あれ)」
全ての点が、条件に合わず除外。
それは、この近くにはNo.2は居ないことを示していた。
仕方ないので、No.4は通行人を装いつつ近辺の探索に繰り出す。
「(…)」
エレキテルラボの案内をしてるエレキテルの前を通り過ぎ
「(……)」
盛り上がっている一次職の集団の傍を通過し
「(………)」
東可動橋へと繋がる階段の手前で折り返し
「(…………)」
南方面へダウンタウンの外周に沿って移動を開始――
「(……………!)」
その途端、ピピッと電子音が鳴った。
索敵結果には、一つの赤い点が表示されていた。
<該当件数1:評議会未登録のDEM>
「(No.2……!?)」
未登録、というだけではNo.2かどうかは分からない。
確認のために、No.4はレーダーを頼りにその位置に向かった。
場所は、ダウンタウン南東外周、木造家屋が連なる住居エリア。
その最奥に位置する小さな家。
表札には『フィリップ』と記されている。
謎のDEMの反応は、その中からだった。
「(…………)」
内部に人の気配がある。
サーモグラフィーで探ると、中に一人の男と一体のDEMが確認できた。
DEMの方はかなり温度が下がっており、動力炉をやられている可能性が高い。
No.3からの映像情報に因れば、No.2もNo.1の攻撃により似た手傷を負っていた筈だ。
「(No.2…………)」

もしこの扉の先に、No.2が本当にいたら、私はどう対処すべきか。
行動不能ならば、回収すればいい。
もし反攻の姿勢を見せたら――破壊するしかない。
だが、自分にそれが出来るのだろうか?
つい一か月前までは、寮機として共に戦ってきた。
DEMの原則として『自己保存』の次に『同族保存』が存在する。
つまり、自分が守れる状況なら、仲間も守らなければならない、と言う事。
だからNo.2も守る対象だった。
しかし今現在、No.2は暴走したイレギュラーとして定義づけられている。
見つけたら攻撃しなければならない。
だが自分は、No.2が暴走したところを見てはいないのだ。
No.2は守るべき存在なのか、それとも壊すべき存在なのか。
ブレインが納得する答えは、未だに出ていない。
私は、どう判断したらいんだろう――

「何……考えてるんだろう、私は」
ふと我に帰るNo.4。
思考に生じた異常な思考――ノイズを、直ぐにデリートする。
自分は命令だけに従っていればいい。
「何も……考える必要なんてないんだ。
 私達に、意思なんてものは存在しないんだから」
吹っ切るように、No.4は右腕を振り上げた。
<『蒼血』再構成開始...戦闘モードに移行>
ロングパレオの水着が解け、右手に集い大鎌を成す。
体の表面も色艶の良い肌色から、スカイブルーのウェットスーツに変化。
水着の不振人物は、あっという間に青色の暗殺者へと変身していた。
「(……突入!)」
一息で、鎌で十字を切る。
扉がバラバラに崩れ落ちるその瞬間を狙い、隙間から中へ飛び込む。
「えっ、だ、誰!?」
中に居た一人の少年が、驚いてこちらを見た。
見るからに弱そうな茶髪のエミル種の少年は、片手に剣を持っているが臨戦態勢に入っていない。
ドミニオンの兵士と渡り合ってきたNo.4にとって、彼はただの的でしかない。
「遅いっ!」
No.4は一瞬で間合いに飛び込む。
その勢いを借りて、左の拳を少年の頬に叩き込んだ。
「ぐはぁっ!」
そのひ弱そうな少年は、情けない声を上げて吹っ飛ぶ。
放物線を描いて床に落ち、そのまま気絶してしまった。
「うう、ティタ……」
「……弱っ……」

少年は、手足を縛られ猿ぐつわを噛まされた上でタンスに押し込められた。
殺さなかったのは、単に騒ぎを大きくしないためである。
邪魔者の処理を終えたNo.4は、目的であるDEMの方を見た。
「……No.2……では無いね」
「……」
床に倒れているのは、スカウトスーツを着たDEMの少女。
胸に大きな穴が開いており、中の配線が痛々しく顔を覗かせている。
コアパーツは失われているようだった。
救命措置をしたところで、十中八九助かるまい。
無駄足と考え、家を出ようとしたNo.4。
壊れたドアの残骸を跨いだその時、微かな声が彼女を呼び止めた。
「待……って…………」
「!」
振り返ったNo.4の目の前で、瀕死のDEMが起き上がろうとしていた。
少し体を動かす度に、切れた回線同士が触れ合い火花と煙を散らす。
それでも、そのDEMは動いて何かをしようとしていた。
「あ…………」
本当なら、任務に関係ない存在は無視するべきである。
でもそれを見た時、No.4は何故か彼女を放置できなくなった。
「動かないで」
No.4は駆け寄り、膝を突いて少女を抱きかかえる。
コアの失われたDEMは、No.4の想像以上に軽かった。
「何を言いたいの?」
「私は…………」
DEMの少女は、残された僅かなエネルギーを吐き出すようにして、ぽつりぽつりと語りはじめる。
「私は……“母”を裏切り、逃げ、だしたんだ……」
「……何故?」
DEMの社会は、“母世代”や、もっと上位の存在の命令のみで全てが動く、いわば中央制御型の社会だ。
命令に背くイレギュラーが破壊をされるのは、秩序を保つための当然の処置である。
「私には……判らなかったんだ……
 自分が……不良品なのか……」
「不良品……?話が読めない」
「……ごめん………なら……」
DEMの少女は、震えながら手を伸ばした。
それは傍らのNo.4の手に重ねられ、ぎゅっと握った。
「……何……?」
「わ、私の記憶……を……見てくれ…………」
少女がそう言うや否や――
「!?」
膨大な情報の波が、No.4のブレインに流れ込んできた。







   『カワイイ』……?
   理解不能……。



「……今のは何の声……?」
気が付くと、No.4はドミニオン界にいた。
正確には、ドミニオン界の『記憶』の中。
「これは私のメモリーよ」
「……貴女は……」
いつの間にか、No.4の横にさっき倒れていたDEMの少女が立っていた。
その体は破損は無く、全くの無傷。
ここが現実空間ではない証拠だ。
「私のメモリーを共有して貰ってるの。
 その方が、話すより早いから」
「……何を見せたいの?」
No.4の問い掛けには答えず、少女は前を指さした。
「見て……私が来る……」

少女の指差した先で、同じ少女が歩いている。
その少女が向かう先には、小さなダンボールの箱。
「私はあの時、友軍からはぐれていた……
 そして、あの子と出会った」
「あの子……?」
その時、ダンボールの箱から小さな生き物が飛び出した。
グルル、と低いうなり声を上げているのは、小さな犬。
脚部の毛皮が赤黒く染まっている。
「あの子は怪我をしていた……
 私は、あの子の怪我を治した」
その光景を見て、思い出すように呟く少女。
「何故そんな事を?」
No.4には理解出来なかった。
機械種族にとっては、他の生命体全てが敵。
一番邪魔なヒトの優先度が高いだけであって、その他の獣やモンスターの類も敵である事に代わりは無いのだ。
「危険度は極めて低いと感じた。
 ……それに、治したら……『カワイイ』の意味が判るかも知れないと思ったんだ」
自信が無いのか、躊躇いがちに少女は語る。
「『カワイイ』……?」
「私の教育役が言っていたんだ。
 ダンボールの中に『カワイイ』生き物がいる、と」
『カワイイ』という言葉は、DEMの持つ概念に含まれない。
DEMには愛でると言う習慣が無いからである。
「……私には理解出来ない」
No.4が呟くと、少女はそうかな、と首を傾げた。
「私も、最初はそんな言葉、全く理解出来なかった……。
 だけど――」
二人の目の前で、場面が移り変わる。
少女がダンボールに近づくと、また子犬が飛び出してきた。
前の場面と違うのは、子犬が少女の足に体を擦り付けて来たこと。
「犬の反応が違う……」
「うん」
記憶の中の少女は、じゃれつく犬を撫でたり、餌をやったりしている。
そして、仕方なさそうにこう言った。


   ふ……。
   何が『カワイイ』だ。
   全く、理解不能だな……。


「だけど……本当はこの時……
 私には『カワイイ』の意味が判っていたんだ」
懐かしむ様に、そして悔いる様に、彼女は言った。
そう言うや否や、子犬が仄かに輝き始める。
「『カワイイ』って言うのは、相手を愛でる気持ち。
 後から、それに気付いた……」
「愛でる……って?」
「誰かを、何かを愛する気持ち」
少女は、記憶の中の少女と犬に近付く。
そして屈みこんで、両手で犬を包み込むようにした。
「私は、この子を失いたくなかった。
 もっとこの子と一緒にいたかった。
 もっとこの子を撫でてあげたかった」
相手は記憶の中の存在だから、当然触れる事は出来ない。
だが少女の瞳は、満足げに笑っていた。
「それが、私のこの子への愛……」
「……」
「ふふふ……もっと愛してあげたかったな……」
記憶の犬と少女の姿が、不意に薄くなった。
世界が色褪せる。
彼女の記憶が終わろうとしているのだ。
「だから私は、自分にも『心』があるかも、って思うようになったの」
「『心』……」
「そう……機械にも『心』は宿るんだ、って」
No.4と少女が向き合う。
少女の顔には、穏やかな笑みだけがあった。
「これが、私が『イレギュラー』になった理由。
 自分に『心』があると信じて、意思に従った結果よ……」
「!」
「『心』を手にして、『愛』を知り、『命』の尊さを知った私にはもう武器は持てなかった。
 戦いを捨てたDEMに与えられる未来は――滅びだけと知っていても」
No.4が見ている目の前で、少女の姿が変わり始めていた。
髪は乱れ、傷は体中を埋め尽くし、胸には大穴が空いた。
逃走中に受けた、執拗な追手によって付けられた傷。
ダウンタウンの家の中で横たわっていた時と同じ状態へと、彼女は朽ちてゆく。
一つだけ違うのは、彼女の手には子犬が抱かれていた事。
銃撃を受け体を赤に染め、息絶えた子犬。
少女が最後に見た、子犬の姿だった。
「そろそろ記憶は終わる……私の命も……
 この子と同じ所に行くわ」
「何故、私に見せたの……?」
「ふふ……なんでかな……」
笑顔のまま目を閉じて、じっと想う。
「……きっと、誰かに知ってて貰いたかったんだ……
 私の事も、この子の事も……」
「……」
少女の片手が、優しく子犬の頭を撫でる。
No.4にはかけるべき言葉が見つからなかった。
何故だろう。
何故こんなにも思考が苦しいのだろう。
自分に死を悼む『心』なんて無い筈なのに。
彼らに共感する『心』なんて、ある筈ないのに。
「……やっぱり、貴女に見て貰って良かった……」
「え……」
「気付いてない?
 貴女……泣いてるのよ……?」
少女の指摘で、No.4は頬を伝う液体に気付いた。
『蒼血』ではない、もっとさらさらした水が、目から溢れだして止まらない。
「涙……?
 私、DEMなのに……?」
「ここは記憶の中だからね……。
 その涙こそ、貴女も『心』を持ってる事の何よりの証」
No.4は必死に涙を堪えようとした。
だが、昂る感情の前で、涙を堪える術など存在しない。
止めようとすればするほど、涙は次から次へと溢れだす。
「有難う、私とこの子の事、悲しんでくれて」
No.4の視界が歪む。
もう少女の顔が見えない。
「そろそろ行かないと」
「ま、待ってよ……もっと、色々教えて……」
「ううん、もう限界。
 もうじき私の全部が、止まってしまうから」
仕方なさそうに首を振る。
と、少女がはっと顔を上げた。
「そうだわ……最後に、貴女の名前を聞かせて」
「私の……?」
「うん、取っておきの名前。
 貴女の好きな名前を、ね」
「好きな名前……」

GN004P……それがNo.4の型番、つまり名前ではある。
だけども、『好き』な名前ではない。
じゃあNo.4か、と言えば、それも違う気がした。
早くしないと、少女が消えてしまう……No.4は焦った。
その時、ふと脳裏に少し前の記憶が蘇った。

 『記号や番号よりも、よっぽど名前らしいと思うんだヨ』
 『……名前、らしい……』

充電中に聞こえた、No.6とNo.5の会話。
彼女たちは、『ドゥーム』『ヴィソトニキ』と呼び合っていた。
その時は全く理解出来なかったのだが、今のNo.4には何となくドゥームの気持ちが判った。

「私の名前は――カラミティー!」
No.4は――カラミティーは、自分の意思で選んだ名前を少女に告げた。
「そう、カラミティー……」
少女は満足げに頷いた。
「カラミティー、その名前、私、忘れない。
 カラミティーも、私達の事、忘れないでね」
少女と子犬の姿が透明になって行く。
お別れの時が、遂に来た。
「私も、忘れない……絶対に!」
カラミティーは少女に駆け寄って、抱き締める。
しかしその腕は少女をすり抜けた。
「貴女が教えてくれた事も、貴女が生きていた事も……
 貴女がその子犬を愛していた事も……!」
「うん……」
「貴女の『心』を……!」
その一言で、少女は救われた。
「ありがとう、カラミティー――」
極上の笑みを浮かべて。
少女は、世界から消えた――



「…………」
カラミティーは目を覚ました。
片膝を突いて、少女の体を支えたままの体勢だった。
内部時計を参照すると、気を失ってから一分も経過していない。
だがカラミティーの中では、計り知れない変化が生じていた。
「……さようなら……」
少女を横たえ、両手を胸の前で組ませた。
安らかな表情で眠る少女。
別れを告げ、立ち去ろうとすると、部屋が急に明るく照らされた。
「…………!?」
見れば、少女の胸の上に小さな光が浮かんでいた。
小さな小さな光。
その光は、カラミティーの胸に一直線に飛び込んでくる。
カラミティーは直感的に、それが少女の心だと判った。
「……」
光はカラミティーのコアへ。
物理的には何の変化も無い。
しかしカラミティーは、『心』が温かくなるのを感じた。
「…………」
胸の上に、手を当てる。
その手を、ぎゅっと握りしめて、カラミティーは強く、強く頷いた。
「一緒に……行こう」



結局、カラミティーはNo.2と接触する事無く、時間切れで帰投する事になった。
だがそれで良かった、と彼女は思う。
彼女にNo.2を破壊する事は出来ない。
今なら、はっきりとそれが自覚できた。
だから出会わなくて正解だった。
「そうだよね……」
No.2は……仲間だ。
No.1を破壊し、暴走した挙句行方を眩ませたとしても、カラミティーの中では仲間なのだ。
No.2だけじゃない。
No.1も、No.3も、No.5も、No.6も、そして新入りのNo.7も。
カラミティーにとって大切な人。
今まで自覚できなかっただけで、ずっとその気持ちはあったんだと思う。
そう、彼女が子犬に注いだ愛情のように。
「みんな……」
いつか、みんな気付く日が来る。
お互いがかけがえの無い存在であることに。
カラミティーはそう信じることにした。
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