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【Genocide Numbers】

Act.22

西アクロニア平原にて戦いは始まってから四時間が経過。
兵にも若干、疲弊の色が現れ始めた頃だった。
状況を一変するニュースが軍陣を駆け抜けた。
『DEM-マザーの降伏』
DEMの親玉と思われる存在が、ドミニオンに屈服した。
その情報は一度は全軍を沸き立たせたものの
それでも一向に収まらない敵の攻撃に、動揺が広がり始めた。
レジスタンスリーダーは無線で作戦の成功を告げ、全軍に撤退命令を出す。
それを受け、足並みを乱しつつも、漸く撤退が開始されようとしていた。

前線の一角、ルージュの陣営にて。
「作戦は成功した!
 全員ヘルサバークまで引け!」
レジスタンスリーダーの伝達通り、ルージュは周囲に撤退命令を告げる。
その声で、丁々発止とDEMと渡り合っていた各種族の兵士達は後退を始めた。
「敵の勢いは弱い!
 一目散に駆けよ、殿は我々が務める!」
「……連中、戦場なのに易々と背中を見せて撤退しましたな」
最初の一声で撤退を開始した兵士を見ていたノウマンが
ルージュにだけ聞こえる声で、呆れて言った。
撤退戦は難しい。
エミル界から来た兵士の中には撤退戦を経験したことがない者が殆どである。
彼らに撤退戦をさせ無駄に消耗させるぐらいなら、自分達で敵を足止めしている間に
さっさと逃げてもらいたい、というのがルージュの本音だった。
「うむ、それを見て作戦を変えたよ。
 苦労をかけるな、ノウマン、シェーラ」
「なぁに、殿こそ戦場の華ですわ、将軍」
シェーラはドラゴンブローバーを振り翳し、威勢の良さを見せ付けた。
彼女は困難な戦場でこそ燃え上がる武人タイプだった。
「ノウマン……苦労ついでに、一つ特命を与える」
「カラミティーの事ですな?」
うむ、とルージュが首肯した。
戦いの半ばで姿を消してから、ずっと音信不通が続いていた。
「……撤退命令が届いていない可能性がある。
 早急に探し出し、連れて帰れ」
「御意に!」
将軍の命令を受け、竜面の執事はカラミティーの去った方向の敵陣に飛び込んでいった。





ノウマンの向かった先とは、やや距離を置いた戦場。
アクロポリスに程近い区画を、轟音が走り抜けた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
大槍を構え暴走列車の如く突進を続けるフラカッソ。
怒りに身を任せ、手当たり次第に味方機を血祭りに上げてゆく。
立ちふさがる者を切り裂き、遠くの敵も左手の銃で撃ち抜く。
視界に入った全てを敵と見なし、彼は終わることのない戦いを一人で続けていた。

「止マレ、イレギュラ――――」
「邪魔だぁぁぁぁぁ!」
また一機、怒れる槍の餌食となる。
初撃で頭を粉砕されても、鉄屑に還るまでスピアサイクロンによる執拗な追撃を受け続ける。
「はぁ……はぁ…………っ!」
ぐしゃぐしゃに潰れたボディーフレームを踏み締め、フラカッソは喘ぐ。
一方的な虐殺を続けているように見えたが、彼の体も確実にダメージを蓄積していた。
全身、傷がないところは無いほどで、特に背中への攻撃は多く喰らっていた。
アラーレキャノンの砲も翼も、殆ど破壊されて原型を留めていない。
唯一無傷なのは――彼の左腕だけ。
それでも彼は、まだ動き続けていた。

どれだけ戦い続けたのか。
どれだけ破壊したのか。
時間の感覚を失った彼には、見当もつかない。
敵の数も、1000体を超えたところでカウントを止めてしまっていた。
「まだだ……まだ終わらん……!」
倒したDEMが持っていたサイコガンから銃弾を抜き取り、拳銃に装填する。
「――ヴィソトニキ」
奥歯を噛み、ギリッと鳴らした。
彼は悲しまない。
代わりに怒り狂っていた。
彼女を死に追いやった機械種族、その全てに対して。
彼は心に堅く誓っていた。
機械種族を、壊して、壊して、壊し尽す。
自分が壊れるその時まで――と。
「まだ来るか……」
遠方より接近する敵の反応をキャッチし、物思いを止める。
彼が視線の先に認めたのは、三体のDEM。
DEM-01、DEM-スナイパー、イリミネーター。
最もポピュラーで相手にしやすい、いわゆる雑魚。
「足しにもならん――」
フラカッソは素早く銃を構え、敵の数だけ引き金を引いた。
だが彼は、敵が遠くにいた事と怒りのために、一つの事実を見落としていた。
「…………!?」
フラカッソは目を疑う。
弾丸は、敵の頭部を貫いて一撃で破壊せしめる筈だった。
しかし実際のダメ-ジは、頭がやや凹み、パーツが僅かに吹き飛んだだけ。
全く意に介さず、DEM達はフラカッソ目掛けて疾走を開始した。
その時初めて、フラカッソは気付く。
DEM達の体が、薄い緑色のオーラで包まれていることに。
「……チャンプDEMか……!」

機械種族は、自分自身の能力を高める電磁波を発生する装置を持っている。
以前はそれを西平原中に埋め込み、圧倒的戦力差でもってドミニオン達の反撃を封じていた。
しかし近年、シュタイン博士の手によりその電磁波の中和装置が開発されてから
DEM達の絶対的優勢は崩された。
中和装置の効果で、広範囲に電磁波を発生する装置は全て役に立たなくなったのだ。
だがDEM達は、装置を小型化し効果範囲を一機に限定することで、中和を防ぐ方法を編み出した。
その小型電磁波発生装置を内蔵したDEMは、チャンプDEMと呼ばれている。
製造が困難なため個体数は少ないが、他のDEMの10倍以上の戦闘力を誇る彼らは
ドミニオン達との戦闘で重要なファクターとなっていた。

フラカッソは再び、拳銃を構えた。
今度はDEMスナイパー一体に狙いを絞り、数十発の弾丸を連続で叩き込んだ。
「!」
一点にダメージが蓄積し、遂にその装甲が破られた。
DEMスナイパーは転倒し、もんどりうってから大爆発を起こす。
「堅い……!」
一般型とは比較にならない耐久度だった。
そして一体の相手をしているうちに、他のチャンプDEMはフラカッソを射程に捕らえていた。
「くっ……!」
攻撃も動きも、普通の01やイリミネーターと同じ。
しかし耐久力と攻撃力は段違い。
フラカッソは巧みに攻撃をかわし大槍を突き入れた。
しかしそれは、装甲を僅かに凹ませて止まる。
槍を持つ手への反動の方が、ダメージとして大きいほどだった。
「――破壊スル」
「!」
手の痺れに驚き、動きを一瞬だけストップさせたフラカッソを、イリミネーターの機神の爪が襲う。
斜め上から振りかぶられた爪を、バックステップで避けた。
だが背後から、01の拳が彼を襲う。
「がはぁっ!」
極大のトンカチで殴られたかのような、頭を砕かんばかりの打撃。
幸い破壊には至らなかったが、ブレインへの衝撃は大きい。
フラカッソは堪らずよろける。
前屈みになったフラカッソに、イリミネーターが胴体目掛けて足を振り上げた。
「!!!」
悲鳴すら出なかった。
フラカッソの体は宙高く飛ばされ、離れた堅い地面へと落ちる。
風に弄ばれる枯葉のように、彼の体は地面を転がった。
「ううっ…………」
倒れ伏せたまま、フラカッソは呻く。
パワータイプのフラカッソであっても、チャンプの攻撃力は圧倒的だった。
このままでは、負ける。
全身が悲鳴を上げるが、フラカッソは大槍を杖にして立ち上がる。
しかし――
「……なんだ、この数は……!?」
フラカッソは絶句した、周囲を見渡した。
自分を取り囲む、10体を越すDEM。
シュメルツ、イールド、アメージャー、クリンゲ……。
その全てが、緑色のオーラをまとっている。
「何故チャンプがこんなに――」
フラカッソは知らなかったが、『戦火の大地』作戦は終了している。
撤退するドミニオンに合わせる様に、DEM達も前線から引き上げていた。
その結果、ドミニオン達に応対していたチャンプ機が全て終結しつつあった。
味方を無差別に破壊する、特A級イレギュラーと認定された危険な反逆者を目指して。
「……ここまでか」
自分に一番近い01とイリミネーターを睨み、フラカッソは両腕から力を抜いた。
動力炉を爆発させ、目の前の二体だけでも道連れにするつもりだった。
彼に、生への執着など無かった。
むしろ、死を歓迎すらしていた。
フラカッソは、コマンドプロンプトに命令を打ち込む。
SuicideBombing...
「今、そっちに行くぞ――」
彼は何の躊躇いも無く、その命令を実行しようとした。

「……うっ!?」

何の前触れも無く吹いた突風が、彼の体勢を崩す。
反射的に手を突いたせいで、彼は自爆し損ねてしまった。
「な、なんだ?」
DEMである彼を倒すほどの風など、そう頻繁に吹くわけが無い。
彼が不審に思った時、頭上から声が聞こえてきた。
「……DEMどもが大量に破壊されてゆくから、どのような強者が現れたのかと思ったら……」
「……!?」
その声の主は、長身の美女。
ドミニオンに似た容姿をしているが、翼は炎のような色で威圧感と神々しさを放っている。
ドミニオン軍正式採用軍服の裾を延ばしたような、スリット入りのロングドレスをはためかせながら
その女はフラカッソの前に音も無く降り立った。
女はアンニュイな表情で、フラカッソの顔を不躾にもまじまじと見る。
長身であるフラカッソよりも更に背が高いので、上から覗き込むような体勢になっていた。
「まさか……そやつもDEMだったとはな」
フラカッソのことを指しているらしい。
突然の登場に唖然としていたフラカッソだが、漸く我を取り戻し彼女に凄んだ。
「なんだお前は……お前も敵か!?」
フラカッソは大槍を構えた。
だが、女は一向に気にした様子も見せずにフラカッソを眺め続けた。
「ふむ……機械種族の敵、ではあるな。
 だが敵の敵は味方、という便利な言葉もある」
「…………」
そのダウナー系の美女は、ふっと口角を吊り上げて笑った。
「丁度いい。
 貴様に力を貸してやるから、ここの機械種族を一掃してくれ」
「は?力だと?」
眉を潜め、女を胡散臭いものを見る目で睨んだ。
「今、私のコスプレをした機械を処断するのに力の大半を使ってしまってな。
 私が直々に雑魚を破壊するのも……絵的に宜しくないだろう?
 神という立場上、な」
「……神?
 お前、さっきから何をブツブツと……」
独り言を大声で呟き続ける美女に、フラカッソは不覚にも恐れを抱きつつあった。
そんな彼の内心に気付かず、女は彼に手を翳す。
「どれ、DEMに力を与えるのは初めてだが……なんとかなるだろう」
「な、何をする!」
黒いグローブをはめた女の手から、フラカッソに光が降り注ぐ。
その途端、彼の全身が熱を帯びた。
「…………!?」
しかし、その熱は不思議と心地よい。
彼は駆動系が全てオーバーホールされたかのような感覚を得た。
「……成功したようだな」
女は手を下ろし、満足げに言った。
フラカッソは全身を恐る恐る検分していたが
側頭部のアンテナの内側に手を伸ばしたとき、突然怒鳴った。
「何をした……?
 って、これは何だ……!?」
「証だ……我が選びし、戦士としてのな」
そのパーツは、小さい羽のようであった。
縁は黒いが、全体は彼女の羽のように、赤と黄色い炎のような色彩だった。
更に彼は、自分のブレイン内に見覚えの無いプログラムが
勝手にインストールされているのに気が付いた。




「ではな、私は帰って寝る」
混乱の中にあるフラカッソを放っておいて、彼女は踵を返した。
その背中に、フラカッソは何度目かわからない疑問を叩きつけた。
「待て!だからこれは一体――」
「打ち勝って見せろ、機械の英雄よ――――竜の命令だ」
女は振り返ることなく、有無を言わせぬ口調で言う。
そして来た時と同じように、烈風と共に浮かび上がり、姿を消した。
「……竜、だと……?」
女が消えていった空を呆然と見上げる。

ドミニオンに似た容姿。
神、そして竜という単語。
更には奇跡とも言える超常魔法。
ドミニオン界の住民なら誰もが一度も聞いたことがある、この世界の支配者。
脳裏に浮かび上がった名を、フラカッソは知らず知らずのうちに、呟いていた。
「ドミニオン……ドラゴン…………」



『謎の生命体の反応消失を確認』
『イレギュラー機の殲滅を再開』
突如出現したドミニオンドラゴンを警戒していたチャンプDEM達は、行動を再開した。
対象に近かった01とイリミネーターは、ドミニオンドラゴン出現の余波を受け倒されていた。
しかし彼らは、そんなことを気にしたりはしない。
イレギュラーを破壊できれば、それでいいのである。
『対象、こちらを目視。
 突撃してきます』
フラカッソがチャンプDEMの一体に狙いを定め、走り寄って来た。
しかし電磁波のオーラを展開している彼らは、回避も防御もしない。
意図的に攻撃を受け、その隙を狙って迎撃すればいいだけである。
彼らは、強化された己の防御力に全幅の信頼を置いていた。
それが仇となるとも知らず。
「竜の加護……展開!」
『対象、何らかのスキルを発動した模様』
フラカッソの身体から、赤いオーラが立ち上る。
しかしチャンプ達は、それを無駄な足掻きだと切り捨てた。
そして一体とフラカッソが、激突する。

「ガ…………!?」
『理解不能……理解フノ……ウ……』

フラカッソの大槍は、豆腐のようにチャンプDEMの身体を粉砕していた。
破壊されたチャンプDEMは最後まで判らなかったようだが、他のチャンプはそれを見た。
緑と赤のオーラが接触した瞬間、緑のオーラが弾け飛んだのを。

「……これが竜の力か」
先程の苦戦が嘘のように、あっさりとチャンプDEM一体を葬れた。
フラカッソは、残りのDEMを見回す。
彼を警戒し集まり、陣形を組始めるが
チャンプとしてのアドバンテージを失った今、彼の前では全てが無駄でしかない。
「いいだろう、ドミニオンドラゴン……
 貰ったこの力、存分に奮わせて貰う!」
彼は槍を天頂に向かって掲げ、誓う。
そして怯えるチャンプ目掛け吶喊した。
彼が想い人と同じ所へ行くのは、もう少し先のようであった。



「……何故、前線から離れた場所にこんなに残骸が……」
その頃、ノウマンはカラミティーを探して彷徨していた。
敵陣なので激戦を覚悟していたのだが、どういうわけか、敵よりも敵の残骸の方が多かった。
前線よりも酷い戦いがあったかのようだった。
「ここら辺の筈ですが……
 カラミティー?いないのですか!?」
最後に反応があった場所で、ノウマンは大声で呼びかけた。
しかし周囲にはスクラップが広がるばかりで、何一つ動くものの気配は無い。
まるで墓場のように。
「…………」
ノウマンは何も言わず、そして何も考えないようにして
他の場所を探そうと考えた。
彼は足を別の方角へと向ける。
その目の前で、突然何かが光った。
「むむ……なんですかな?」
地面スレスレを、蛍のような光の珠が三つ、弱々しげに漂っていた。
それは紫と赤と黄の光だった。
「……?」
DEMの新兵器とも限らないので、ノウマンは用心してその光に近づく。
すると、赤い光が急に動き始めた。
「!」
赤い光はまっすぐノウマンに近づくと、手に提げた青龍偃月刀の刃の周りを、漂い始めた。
刀身にキスするように、くっついたり離れたりを繰り返す赤い光。
何か害をなす訳でもないのでノウマンが黙ってみていると、黄と紫の光も寄ってきた。
紫の光は勢いをつけて赤い光に衝突し、赤い光はそれでフラフラと地面に落ちた。
黄色い光と紫の光は、赤い光を挟み込むようにして持ち上げた。
まるで、喧嘩もしくは漫才でもしているかのようだった。
「……?」
3つの光はノウマンを離れ、どこかへと漂っていく。
しかし一定距離離れると、そこで止まった。
まるで、ノウマンを待っているかのように――
「……前もありましたな、こんなのが」
直感的に、その光の正体を察したノウマンは急いで後を追った。
勘が正しければ、光の導く先に居るはずである。
彼が捜し求める者が。

やがて光は、ある場所で止まった。
他の場所と同じく、スクラップだけが散乱する場所に見えた。
「ここに居るのですか?」
ノウマンの声に応えたのか、三つの光は地面へと落ちていく。
そこには、何かが埋まっていた。
手のひらに収まるくらいの青い球体。
それが半分ほど頭を出しており、その天頂には小さな穴が開いていた。
光は、その穴に吸い込まれていくように消えた。
「……!」
ノウマンは悟った。
その球体が何なのか。
何故その球体の周りの地面が、銀色に輝いているのかを。
「……」
彼は黙って、マスクの下から一対の電源ケーブルを引き出した。
そしてその珠の適当な箇所――最初に彼女を助けたときに繋いだのと同じ場所に、刺した。
しかし球体は、何も反応を返さない。
ノウマンは球体――カラミティーのコアを懐に抱えて、囁いた。
「…………さぁ、帰りましょう、カラミティー」
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