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【Genocide Numbers】

Ending

DEM-ジェノサイドと第七工廠の全ての機械は
その忌まわしい過去ごと、全てこの世から消滅した。





『戦歌の大地』作戦の日、アクロポリス北部で発生した
三界の長い歴史でも、観測史上最大級の爆発の原因は
その後の調査でも明らかにされなかった。

そこにあったであろうDEMの組織も基地も
跡形も無く、吹き飛んでいた。

ジェノサイドナンバーズという部隊があった痕跡など、どこに無かった。
7体のDEMは全て破壊され、忌まわしい記録としてDEMのデータベースからも消去された。





<――第七工廠に関する全記録の抹消を完了――>





最早、ジェノサイドナンバーズを誰も知るものは居ない。
彼らを知っていた僅かのヒトも、年月を経て、忘れてしまった。



彼らは機械
彼らは心無き兵器
彼らは殺める為に戦うモノ


なれど


彼らはヒト
彼らは愛し合う家族
彼らは生きる為に戦うモノ


DEMに生まれ落ちた7人の生の記録は

ここに永遠に葬られたのだった。


     Genocide Numbers Fin

















この物語はフィクションです。
実際の人物、事件、部隊とは関係ありません。




































「打ち上げだーっ!皆の者、お疲れーい!」
バァン!
アニキが拳を振り上げて叫んだ。
それと同時に、仲間達はクラッカーを鳴らす。
壁にはぶら下がった横断幕には、こう書かれていた。

  『映画GenocideNumbers クランクアップ記念パーティー』

「お疲れ様、アニキ!」
「おお、お疲れカーネイジ!
 弱虫の癖によく頑張ったな、この野郎!」
「や、やめてよぉー」
アニキの手が、ぐしゃぐしゃとカーネイジの頭を撫でる。
自分の髪色と同じ狼の耳をつけた弟は、嫌がる素振りを見せるが顔は笑っている。
「フフフ、アニキの胸を触るシーン、凄く嬉しそうにやってたネェ」
ドゥームはカーネイジを見て、ニヤニヤ笑っている。
「お前、わざとNG出してあのシーン撮り直しさせようとしてただろ」
「しししししてないよーっ!?」
追いかけっこを始めるアニキとカーネイジ。
その姿を見て、フラカッソは肩をすくめる。
「やれやれ……全24話の撮影を完了して
 よくあれ程の体力が残存しているものだ」
彼は手にはカクテルグラスを持っていたが、服は場違いないつもの迷彩服。。
そのグラスに、自分のグラスを触れさせ音を立てるヴィソトニキ。
「お疲れ、フラカッソ。
 かっこ良かったよ」
彼女はシャツとミニスカートの他に、大きな白い羽根付き帽子を斜めに被っていた。
「具体的には、如何なる箇所が」
「全部、かな。
 特に、私が死ぬシーンとか……くちびr」
「……それ以上の発言を禁止したいのだが」
視線を逸らし、ヴィソトニキから離れようとする。
しかし彼女はその後ろを付いて周り、フラカッソの空いている手にそっと抱き付いた。
「えへへ……」
「……」
フラカッソはいつものポーカーフェイスを、少しだけ赤らめていた。
そんな二人にお構いなく、テーブルにがっついて食事に勤しむ水色のDEM。
「……もぐもぐ(゚Д゚)ウマー」
テーブルの上には、パーティー用のご馳走が所狭しと並べられている。
そして彼女が手にしたプレートには、漫画肉が山と積まれていた。
「カラ姉、ちょっと食べ過ぎじゃ……」
「……カーネイジも食え食え。
 顎が落ちるよ」
「あ、じゃあ……(゚Д゚)ウマー」
思い思いにパーティーを楽しむ六人。
ドゥームはそれを見て、目を細めて微笑んでいた。
「ふふ……」



…………



パーティーも一段落した頃。
「ふぁぁ……そろそろ寝ようかな……」
ヴィソトニキが大欠伸を一つ。
その肩を抱いて、フラカッソが寝室へと促す。
「撮影で疲労が蓄積していると判断する。
 充分な睡眠を摂取するのが望ましい」
「そうね……。
 じゃ、みんな、私先に寝るね」
「おやすみ、ヴィー姉」
「送り狼になるなよ、フラカッソ」
「……品の無い愚姉だ」



…………



二人がパーティー会場を後にし、部屋には四人が残った。
アニキ、カラミティー、ドゥーム、カーネイジ。
四人はテーブルの上を適当に片付け、席に着いていた。
「…………なんか、嘘みたいだな。
 この前まで、命がけで戦ってたなんてさ……」
アニキの言葉に、三人は黙って頷いた。
「よく、生き伸びたよね、僕ら」
「……奇跡、だね」
カーネイジとカラミティーも、手元を見つめながら呟く。
そこには、さっきまでの陽気に騒いでいた姿はない。
「ボクらが戦闘用DEMとして戦ったのは、真実。
 だけど世界で、それを覚えているのはここの四人とフラカッソ……
 あと将軍家とメリーさん達くらいなものだヨ」
ドゥームは寂しげに言った。
その後を、アニキが引き継ぐ。
「そして私らは……その事実をフィクションにしなけりゃならない。
 そう、皆で決めたんだからな……」
その言葉は、全員の心に重く響く。
その響きは、やがて過去の記憶と共鳴する。
撮られる事の無かった『GenocideNumbers Act.25』と。





















【GenocideNumbers】 Act.25





大爆発の中心地に、奇妙な物があった。
第七工廠を丸々吹き飛ばすような爆発の爆心地で
形を保っているものがあること自体、奇妙といえば奇妙ではあるが。
それはスクラップを寄せ集めて作った、卵のような繭のような、そんなオブジェだった。
乾いた音がして、その表面に罅が入る。
熱で既に炭化していたのだろう、風が吹くだけでも、その物体は塵になって消えてゆく。
やがて中身が、外界に姿を現した。

「…………何故だ」

熱で全身の装甲が溶けたり焦げたりしている。
全身の機構が、同様に大きな被害を受けている。
しかしそれでも、そのDEM――フラカッソは、そこに立ち、大地を踏みしめていた。

「何故だ、兄さん!」

フラカッソは虚空に向かって、声を張り上げる。
アニキラシオンエンジンの爆発の被害を最も受ける位置にいる彼が
蒸発しないで助かってしまった理由。
それが、先ほどの繭のような物体だった。

アニキラシオンエンジンを打ち抜く瞬間。
フラカッソ目掛け、四方八方から機械の触手が伸びてきた。
彼は、それが自分を襲うものだと思った。
だがアニキラシオンエンジンに銃弾が当たる刹那。



『弟を助けるのが兄の役目……
 ソウダナ?オトウトヨ――』



「――――!」
フラカッソは感じた。
マサカーが彼に、そう呼びかけるのを。
そして触手はフラカッソを襲わず、彼を包み込むように幾重にも重なった。
爆風で溶け落ちても、完全になくなる前に次の触手が彼を護る。
何重にも、卵のように、繭のようになって。
あの膨大な量の機械が、フラカッソただ一人を助けるために動いたのだ。
そして、機械の壁が全てが消えてなくなる直前に、大爆発は終わった。

フラカッソは判っていた。
あれが、マサカーの――兄の遺志がなした業だと。
最期の最後で、兄の中でどのような変化があったのかは、今となっては判らない。
しかし一つ言えることは、その気になればマサカー自身は
同様の方法で爆発を耐え凌げた、という事である。
だが彼は敢えて、フラカッソを守り抜いた。

「……どうして……俺を……!?」

「おーい、誰かいないノー!?
 返事してヨ-!」
「…………」
遠くの方から、ドゥームの声が風に運ばれてきた。
ひとまず、合流した方がいいだろう。
「じゃあな、兄さん……」
フラカッソはその場を離れる。
周囲には彼を守っていた機械の残骸以外、殆ど何も残っていない。
当然、マサカーの頭部も。
だがフラカッソの中には、最後に見たマサカーの顔が焼き付いている。
笑ってるように見える黒い鉄火面が。
「…………有難う」
それだけ言い残し、フラカッソは振り返ることなく、歩き出した。

フラカッソがよろよろ歩いている姿を
遠目に認めたドゥームは、興奮して大声を上げた。
「ああっ、フラカッソー!?」
「……無事だったか、No.6」
「んもう、ドゥームだヨ」
軽口を叩き合う二人。
しかしお互い、生きて会えるとは思っていなかったため、ドゥームは嬉しそうだった。
フラカッソですら、顔が綻んでいた。
「約束は守ってくれたようだな」
「うん、勿論♪」
ドゥームは膝の屈伸で、背負っているものを揺らした。
彼女はメインベースから、フラカッソに頼まれてあるものを持ち出していた。
ドゥームは自分と変わらない重量のものを、背中に負ぶさってメインベースから外まで逃げたのだった。
「ちゃーんと、キミのお姫様は助け出したヨ」
「また、会うことになるとは思わなかったがな」
フラカッソが、ドゥームの背中で眠る少女に歩み寄る。
「……ヴィソトニキ……」



………………



カーネイジからドゥームへの最後の通信があった後。
メインベースに現れたのは、満身創痍のフラカッソだった。
ドミニオンドラゴンに力を与えられた彼は、平原の敵を悉く打ち倒していった。
残った敵も潰走したので、彼たった一機で平原のほぼ全てのDEMを駆逐した事になる。
敵がいなくなり、それでも生き延びてしまった彼はメインベースへと赴いた。
そこには、彼の大切なものがあったから――

「お願い……カーネイジとアニキを助けてヨ……!」
「一体何事だ、No.6!?」

だがドゥームに泣きつかれ、事情を聞いたフラカッソは
アニキとカーネイジの救出へ向かう決意を固める。
その代わりとして、ドゥームに一つ仕事を頼んだ。

それが、今彼女が背負っているもの――ヴィソトニキのスペアボディの持ち出しである。
フラカッソは出撃前、ヴィソトニキのブレインをこっそりスペアボディにコピーしていた。
彼はその時、間もなく自分とヴィソトニキはエキドナの手により
処分を受けることを察していた。
何とかして、彼女の『心』をどこかに保存出来ないか、と考えた末の苦肉の策が、それだった。

通常、ブレインをそのままコピーすることは禁じられている。
完全にコピーするのは不可能だからである。
コピーしたブレインは、記憶の一部が抜け落ちていたり、思考方法が若干異なっていたりと、
オリジナルとは少なからず違うものになる。
ヴィソトニキをコピーしたからと言って
再びフラカッソと恋に落ちるかどうかは保障出来ないのだ。
また、多少異なると言っても元は同じ人格。
自分が二人になることで、アイデンティティーの崩壊による暴走など
予期せぬ事態に繋がる事もありうる。

だがフラカッソの想いは、彼にその禁忌を犯させた。
寝ているヴィソトニキの服を脱がせ、全身にケーブルを繋ぎ
全部のデータを複製しスペアボディーに収めた。
そしてスペアボディーを、そのままスペアボディー置き場に戻したのだ。



………………



フラカッソは、ドゥームからヴィソトニキを受け取る。
全身が悲鳴を上げるが、なんとかお姫様抱っこに成功する。
腕の中で安らかに眠る彼女を見て、フラカッソは複雑な気持ちになった。
彼の中には、イミテイトF1型に破壊され、左腕を彼に託したヴィソトニキと
目の前の、傷一つなく、一度も目覚めたことのないヴィソトニキがいる。
自分は死ぬつもりだったので、二人目の彼女とどう付き合っていくか、について
フラカッソは考えたことがなかった。
暫くは悩むことになりそうだ、とフラカッソは覚悟した。
「そういえば、アニキとカーネイジは?」
文字通り肩の荷を降ろして一息ついたドゥームが、辺りを見渡して言った。
「先に逃がした筈だが……」
「おおおおおーい!」
きょろきょろし始めた二人に、遠くから大声で呼びかける者が居た。
「あ、アニキ!」
二人は遠く離れた瓦礫の山に、スクラップを掻き分けて進むアニキの姿を認めた。
その背には、カーネイジらしきDEMが背負われている。
両足は失われていて目は閉じているが、命に別状はなさそうだった。
気を失っている割には、右手はアニキの手をしっかり握っている。
「お前ら無事かー!」
ゆっくりと進むアニキに、ドゥームは歩み寄る。
アニキの左胸は、フラカッソの応急処置を受けてはいたものの、依然酷い様相を呈していた。
それを見て、ドゥームは顔をしかめた。
「酷い怪我だネ……」
「弟にこんなに激しく乳捏ねられる時が来るとは、夢にも思わなかったぜ」
「それでも生き延びるとは、相変わらずしぶといな、No.2」
フラカッソは嫌味っぽく言ったが、本気でアニキを毛嫌いしている様子は無かった。
アニキは彼を睥睨しつつ、バツが悪そうに言う。
「よぉ、フラカッソ……」
「なんだ」
「……この借りは、いつか返す」
「フン……期待しないで待っててやる」
二人は睨み合う。
その間に、ドゥームが分け入った。
「はいはい、喧嘩は今度にしてネ!
 この5人は助かったんだから、生きている喜びを噛み締め――ん?」
ドゥームの目の前で、アニキの体がふらふらと揺れ始めた。
「どうしたのかナ、アニキ」
「……あー……すまん、エネルギー切れ」
勢いよく、うつ伏せに倒れこむ。
それでもカーネイジの手は離さなかったので、結果として下敷きになった。
「うぐ…………もー駄目……」
「あ、アニキー!?」
肩を掴んで、必死に揺さぶるドゥーム。
背後で、フラカッソが控えめに声をかける。
「……なぁ、ドゥーム」
「な、何フラカッソ?
 今アニキが――」
「悪いが、俺も限界だ」
「え」
重いものが落下するような音に慌てて振り返ると、フラカッソも仰向けに倒れていた。
「ちょ――!?」
「……流石に……戦い過ぎた……」
ヴィソトニキは彼の横に転げ落ち、偶然にも添い寝しているかのような体勢になった。
「こうして眠るのも……悪くない」
そう言って、彼も本当に眠ってしまった。
「いや、いやいやいや……
 こ、困ったネ……」
ぐったりとしている四人の間で、右往左往するドゥーム。
しかし彼女もやがて気付いた。
自分の残りエネルギーが、やっぱり少ないことに。
「あ……」
脚に力が入らず、ドゥームは遂に転んだ。
そしてそのまま、スリープモードに入ってしまった。

瓦礫ばかりが広がる西平原で、五体のDEMが仲良く眠りについた。





「うおおっ!?」
その少し前、大爆発の瞬間。
カラミティーのコアを抱え、西平原をひたすら走っていたノウマンの背後で
想像を絶する大爆発があった。
爆心地からは遠く離れていたが、軽い衝撃波が彼まで届いた。
体が浮き、うつ伏せに地面に倒れるノウマン。
「うっ!」
しかも地面から飛び出ていた岩の角に、懐に入れていたカラミティーのコアが直撃。
焦って立ち上がり、コアの様子を確認した。
「こ、これはマズ――」
「……いたいー」
突然、ノウマンのブレインに女声が流れ込んできた。
それはコアに繋いだケーブルを伝わって来ていた。
「か、カラミティー嬢!?
 無事だったのですか……!」
「……ん?
 ノウマン?」
カラミティーが、寝起きのような反応を見せる。
暫く、あー、だの、うー、だの唸ってから、漸く状況を理解した。
「……思い出した。
 『蒼血』の制御ユニットを撃ち抜かれたんだ。
 だから『蒼血』が使えなくなったけど、脳は平気だよ」
「そうでしたか……心配したのですよ」

『そうです!』『そうですよ!』『そうだぜ!』

「……今、何か言った?」
「どうかしましたか?」
ノウマンの声に被さって、別の声が三つほど聞こえたような気がした。
しかしノウマンには聞えなかったらしく、彼は首を傾げた。
「……ふふ、まあいいや」
「はぁ。
 それでは早く帰りましょう。
 その体では不便でしょう」
そう言ってノウマンは再び疾走を開始しようとする。
だがカラミティーは、それを引き止めた。
「……待って……!」
「どうなさいました?」
カラミティーは、感覚を研ぎ澄ました。
体は失われているため五感は無いも同然だが、彼女の『心』が何かに反応していた。
「…………」
何か、懐かしいものを感じた。
「(四つか五つか……)」
カラミティーは更に集中する。
その気配は、爆心地――メインベースのあった方向からだった。
「……ノウマン、連れて行って欲しいところがあるの」
「何処ですか?」
「……とりあえず、爆発のあった方に」



カラミティーの導きで、ノウマンは敵も味方も居ない、瓦礫の原を走る。
「……もっと右」
「了解ですぞ」
彼女が何処へ行きたがっているのか判らなかったが
その必死さはノウマンにも伝わっていた。
こんなコアだけの状態になっても、優先しなければいけない用事なのだろう、と。
「……近い。
 ノウマン、近くに何も無い……?」
やがて二人は、瓦礫で出来た丘の上で立ち止まった。
ノウマンは周囲を良く見渡す。
そして、視界の中に奇妙なものを見つけた。
「あれ、ですかな……?」
「……どれ? どんなの!?」
カラミティーの勢いに気圧される様に、ノウマンはそれの特徴を上げた。
「脚が野太くて、ツインテールのDEMと
 巨大な槍を持ったDEMと
 両手に拳銃を持ったDEMと
 水着みたいのを着てビットを浮かべてるDEMと
 巨大なスカートっぽいのを履いたDEMです」
なんともな説明だが、カラミティーは直感した。
「……たぶん、当たり!」

「それ、私の兄弟!」





そして彼らは、ルージュ家に保護され匿われた。
そこでまさかのカラミティーとの合流を果たし、一同は喜びあった。
また、エミル界からは連絡を受けたメリー一家が来て
アニキとドゥームは恩人と再会することが出来た。
周囲が止めるのも無視し、アニキとメリーは約束通り本気で殴りあった。
どちらもなかなか倒れず、結局勝負はルージュが一旦預かることになったが。
まだドゥームは、サージャにホの字で滞在中ずっとベタベタしていた。
サージャがエミル界に帰るときも着いて行きたがったが
評議会のほとぼりが冷めるまではウェストフォートに居るようにと言い包められ、渋々従っている。
フラカッソは戦闘に造詣の深いノウマンやシェーラと馬が合ったらしく
暫くはルージュの下で戦うと宣言していた。
そしてカーネイジとアニキは、近々エミル界に行き
メリー家の一員として正式に受け入れられることになっている。

漸く、彼らに本当の平穏が訪れていた。
『戦歌の大地』作戦以後、DEMの侵攻も減り
彼らはルージュの家にて客人として日々を過ごしていた。

だが、彼らには解決すべき問題が一つだけ残っていた。





「……フラカッソ、彼女をどうするノ?」
眠れるDEMの少女――ヴィソトニキ。
彼女を起動するか否か、彼らはまだ結論を出していなかった。
「…………」
フラカッソは、ヴィソトニキのシルバーの髪を撫でた。
彼の望みは、彼女の笑顔。
しかし――自らがコピーだと知って、彼女が幸せになるかどうか。
仮に彼女の記憶を操作したとしても、問題は残る。
「俺達は、ジェノサイドナンバーズ……名前の通り、皆殺し部隊だ。
 DEM陣営を抜けようと文民になろうと、過去は変えられないだろう」
その事実を抱えて生きていく事の辛さは、カラミティーだけでなく、アニキもフラカッソも感じている。
実際に殺人を犯したことの無いカーネイジだって、二人の気持ちを察してしまい
兄弟として同じ苦しみを共有していた。
「例え、ヴィソトニキの記憶を改竄したところで、いつか気付くさ。
 ヴィソトニキにはもう、あの血生臭い世界に足を踏み入れて貰いたくない」
「……でも兄さん、ヴィソトニキ姉さんの事が――」
フラカッソはカーネイジの言葉の先を遮る。
「皆まで言うな、カーネイジ。
 愛する女を苦しめてまで、幸せになりたいか?
 それが本当に幸福か?」
「それは……」
黙り込む男二人。
それを眺めていたアニキが痺れを切らして立ち上がった。
「ああもう、まだるっこしいな!
 だったらみんなで忘れちまえばいいじゃないか!」
「は?何を言っている?」
フラカッソが不審げな目を向けた。
「全員でジェノサイドナンバーズを“嘘”にしちまえばいいんだよ!」
「あ、それ楽しそうだネ!」
ドゥームが両手を叩いて賛同した。
カラミティーも理解したのか、うんうんと頷いている。
「……いい考え」
「ジェノサイドナンバーズをやめるって事……?」
「ジェノサイドナンバーズなんて初めからなくて、仮想の団体でした
 ――って自分達に思い込ませる感じかナ」
「なるほど……?」
ドゥームの説明にいまいち合点がいかないらしく、カーネイジは
「しかし、ジェノサイドナンバーズが存在しないとしたら、俺達は何になるんだ?」
フラカッソの疑問に、一瞬沈黙が訪れた。
だが、カラミティーの暢気な声があっさりとそれを破る。
「……新しいチーム名が要るね」
「ち、チーム名……そういう問題か?」
フラカッソががくっと肩を落とすが、他のメンツは極めて真面目に新しいチーム名を考え始めた。
「そうだな……特攻野郎Dチームとかどうだ?」
「ボクはアニキと違って野郎じゃないヨ。
 それよりドゥームと愉快な仲間達なんてどうかナ?」
「ふざけてるのか……?」
「極めてマジだけド。
 カラミティーは何かあるかナ?」
「……セクシーブラジャーズ」
「うわぁ……」
「む……じゃあカーネイジは何かあるの」
「う、うん……実は……」
わいわい騒いでいた面々が、カーネイジを注目した。
「……何だ?」
ずずい、とアニキが身を乗り出した。
カーネイジは、何故か恥ずかしそうに尻込みした。
「言いだしっぺのアニキの名前を借りてみたんだけど……変、かな」
「変かどうかは、聞くまで判断が出来ん」
フラカッソの言う通り、という風にカラミティーとドゥームも頷いた。
「う、うん、じゃあ言うけど……」





「アニキチャンネル、なんてどうかな――」





チーム名がなし崩し的に決まり、作業が始まった。
ヴィソトニキを騙すための、『仲好し兄弟姉妹を自然に演出』する偽装記憶。
アニキは乱暴な纏め役、カーネイジはショタな弄られ役、
ドゥームは賢いお姉さんキャラ、フラカッソは頑固な戦闘指南係、
カラミティーは電波系美女、そしてヴィソトニキは味覚は変だけど優しいお姉さん。
戦争とも殺戮とも無縁な、牧歌的な兄弟姉妹の生活。
基本的に仲好しで、ときどき喧嘩して。
そんな理想的な生活の記憶を、五人で考えて作った。
およそ半年分の記憶を作り上げた後、それをヴィソトニキの記憶に上書きする。
しかし、今までの記憶を消す事はしない。
完全に消してしまうと、うっかりジェノサイドナンバーズの話題が出た時、混乱する恐れがある。
だから、今までの記憶は全て『映画の撮影』という事にしてしまったのだ。
何かあっても、映画の話、と言う事で誤魔化し納得させる事が出来る。
五人もまた、アニキチャンネルの記憶を共有し、それが真実だと思い込むようにした。

真実を虚実に。
虚実を真実に。




そしてヴィソトニキが起動し、アニキチャンネルが始まった。
最も、彼らの中では『再開した』ことになるのだが。
狙い通り、アニキチャンネルとしての生活は平和そのものだった。
何一つ問題なく、全てが運んだ。

そして滞りなく、GenocideNumbersクランクアップパーティーへと至った。
あの戦いは映画の中のもの。
フィクションでしかない、と決定づけられた。
彼らが平和に暮らすには、それでいい筈だった。





「……」
フラカッソはベッドに入っていた。
肌触りの良いシルクのシーツの上で、腕の中の愛しい者を眺めていた。
フラカッソの腕を枕にして、蕩けそうな笑みで眠るヴィソトニキ。
彼の望んだ天使のような笑みが、そこにあった。

だが彼は、思い出す。
『彼女じゃないヴィソトニキ』を。
天国からこの光景を見て、彼女はどう思うのだろうか。
フラカッソを見て浮気者と悲しむか
幸せそうなヴィソトニキを見て喜ぶか。
今は亡き彼女の意志を確かめる術は無い。
ただ一つだけ言える真実は、彼女が実在した事だけだ。

彼は毎晩、自分に誓っている事がある。
例え今のアニキチャンネルの生活が幸せで、それに流されてしまっても
彼だけは、ジェノサイドナンバーズの戦いを忘れないと。

どこまでも愛を貫き、死してなおその左腕で恋人を守り続けた可憐な少女を。
意志を乗っ取られ化け物と化しても、最後に命をかけて弟を救った優しくて強い兄を。

「俺は……絶対に忘れない」



そして彼は願う――――



機械としてこの世に生を受けても、心を持つヒトとして生き
心無き兵器として生み出されても、愛し合う家族を目指して
殺める為に戦う事を強要されても、生きるために戦い続けた

7人の生の記録を





どうか、ここを見ている人

忘れないで下さい



































Genocide Numbers is over

and

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