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【Genocide Numbers】

Act.15




「ねぇ、カラミティ――――」

 眩しい。
 ここはどこ?

「アナタは助かったみたいね――良かった」

 その声……トップアーツ?
 何処に居るの!?

「私は、いつでも、アナタと一緒に居る。

 いつでも、アナタを見守ってるわ。

 ――――アナタの心の中から」

 待って、待ってよトップアーツ!



カラミティーは、光の中に二人の人影を見たような気がした。






ざっ ざっ ざっ
土をスコップで掬う音。
墓穴を埋める音。
ここはウェストフォート共同墓地。
葬られている者の殆どが、DEMとの戦闘で命を落とした人々。
兵士だけではなく、一般人も多い。
だが今、埋められているのはそのどちらでもなかった。
「よーし……これで良いわね~」
スコップを持っているのは、あの骨面のメイド――シェーラ。
骸骨頭が墓場で墓穴を埋めている姿は、異常にシュールだった。
シェーラは穴を完全に埋め終えると、墓石の前にささやかな花束を捧げた。
墓石には何も刻まれていない。
名前も、享年も、種族も――
名前と年齢が判らないのは事実だったが、種族名を記さなかったのは
無用なトラブルを避け、故人が安らかに眠れるように、との彼らの配慮だった。

「我が将軍よ、我が嘆願聞いてくださった事、心より感謝しますっ」
スコップの持ち主、骨面の給仕が傍らに立った男にお辞儀。
「大袈裟ですね。
 DEMの頭部を持って帰られた時には、確かに驚きましたが」
将軍と呼ばれた男は、肩を竦めてみせた。
聖職者の服を纏い、燃える様な紅の長い髪。
あのレッドの父にして、ウェストフォート防衛部幹部。
"将軍"ルージュ・ウォーロードその人である。
そして彼らが今埋葬していたのは、先日シェーラとノウマンが発見した
水色のDEM――カラミティーが抱きしめていた、壊れたトップアーツの頭パーツだった。
ここには、ドミニオンや別世界からの援軍であるエミルやタイタニアだけでなく
実験機と呼ばれるドミニオン製のDEMも葬られることになっている。
だが、ウェストフォートの戦列にDEMが加わるようになって、まだ日も浅い。
民に根付いた反DEM感情は深く、味方であっても誹られたり石を投げられたりする事は日常茶飯事。
酷い場合だと、どこかに連れ込んで破壊されたり、墓を暴かれたりもする。
そのため、彼らは敢えて墓にDEMと記さなかったのである。
「……黙祷を捧げましょう。
 彼女の冥福を祈って」
「御意」



「――――」
目が覚めた。
寝てしまったらしい。
<全身の状態確認:良好>
「……あれ、なんで私……」
体を包む、不思議な感触。
彼女の体は、黄色いベッドに横たえられていた。
ヒト用のベッドを使うなんて、彼女には初めての体験である。
シルクの肌触りは悪くないし、スプリングの効いたマットというのも、なかなか楽しい。
もう一度このまま、眠りに落ちてしまいたい欲求に駆られる。
「……こ、これが、噂の二度寝……っ!」
「呑気ですな」
「……」
足側から声がしたので、カラミティーはのっそりと上半身を起こした。
それでようやく、自分が見知らぬ部屋に居る事に気付く。
部屋の入り口には、ドラゴンマスクを被った男が立っている。
臙脂色のバトラースーツを来ているが、どこかの金持ちに仕える執事なのだろうか。
「目が覚めたようですな」
「……誰?女の子が一人で寝てるところに」
「はっはっは!これは気付かなかった!
 我が家には現在、ご婦人がいらっしゃらないもので、このノウマン失念しておりました。
 大変失礼致しました、お嬢さん」
男は大笑いし、ついでに自分の名前を明かした。
「ですが、お嬢さんが行き倒れてたのを連れてきたのは私なのですが」
「……行き倒れていた……」
自分が電気切れで倒れたことも、思い出した。
今、こうして無事で居るということは、充電してくれたのだろうか。
だが彼女の体は――
「失礼ながら――お嬢さんの体を調べさせて頂きました」
カラミティーの疑問を察したのか、ノウマンが先に答える。
「……」
「かなり特殊なアーキテクトで少々戸惑いましたが……
 コアと思われる部分にプラグを繋ぎ、充電させて頂きました。
 お体のお加減は如何でしょうか?」
「……すこぶる、調子いいよ。
 有難うノウマンさん」
「どういたしまして、レディー。
 ノウマンと親しげに呼び捨てにして下さって構いませんぞ」
恭しく頭を下げるノウマン。
芝居がかった身振りが好きなのだろうか。
「……ところで……ここは何処――」
バン。
カラミティーの質問を遮り、部屋のドアが乱暴に開け放たれた。
「ノウマーン!何アンタ女の子が一人で寝てるところに――」
「うるさいぞシェーラ!
 女の子でもないお前が、そんなこと気にするんじゃない骨面め!」
「なんですってキー!爬虫類顔の癖に生意気ー!」
「…………」
騒々しく部屋に入ってきたのは、骨面の女。
こちらはメイド服を着ている。
「……仮装大会……?」
思わず、カラミティーは呟いてしまった。
竜面の執事に、骨面の給仕。
一体どんな雇い主なのか。
カラミティーが期待を膨らませたその時、。
「ノウマン、シェーラ……彼女は目覚めたのか?」
その声を聞いて、言い争っていた二人は一斉に扉の横に控えた。
「はっ、将軍!」
「失礼致しましたー!」
将軍、と呼ばれた男が、二人の間に立つ。
「!」
その姿を見て、カラミティーは少なからず驚いた。
別に男が奇抜な外見をしていた訳ではない。
その容貌が、DEMのデータベースに記録されている要注意人物の一人と、完全に一致したからである。
「……ウェストフォート防衛部幹部――"将軍"……」
ウェストフォート防衛の一端を担うエレメンタラー。
温厚な表情をしているが、20年も前から前線で戦い続けてきた歴戦の猛者。
「流石にご存知でしたか。
 ルージュ、で宜しいですよ」
「……貴方が私のような戦闘用DEMを、どうしようと言うの。
 破壊するなら、黙ってすればいいのに」
カラミティーはベッドから飛び降りつつ、『蒼血』で得物――大鎌を形成した。
彼女は、みすみす壊されるつもりは無かった。
「なるほど、それが貴女の能力ですか。
 でも私は、貴女を傷つけるつもりはないのですが……」
「……」
カラミティーはルージュの真意を探る。
その笑みの裏側に、何を隠しているのか。
もしくは――何も隠していないのか。
「何も、私だって、全てのDEMが敵だとは思ってません」
「……」
カラミティーは目を細める。
20年間、DEMと戦い続けてきた男の言葉とは思えなかった。
DEMのデータベースに因れば、この男は故郷をDEMに滅ぼされ
流れに流れてこの砦に辿り着き、“将軍”と呼ばれるようになったらしい。
隣の従者二人も、その頃から付き従っていると言う。
他のドミニオンの例に漏れず、DEMを相当憎んでいるはずだ。
「(……気を許すわけには)」
カラミティーは鎌を構え、一歩下がった。
何時までも警戒を解かないその姿を見て、ルージュは仕方なさ気に命令した。
「……これは20年間、秘密にしてきたことなんですがね……。
 ノウマン!」
「はっ!」
即座にルージュの意を汲み、ノウマンはドラゴンマスクに手をかける。
頭をすっぽり覆うフルフェイスマスクを、一息に脱ぎ捨てた。
「!」
マスクの下の顔を見て、カラミティーは息を呑む。
ノウマンの瞳は黒。
しかし、その目はヒトのそれではなくプラスチックの瞳。
顔の横には、DEMの証である金属製のパーツが見えた。
「ごく一部の者しか知らないことですが――」
ルージュは手で軽く、ノウマンの背中を叩いた。
「ウェストフォート防衛部の"将軍"は
 20年も前から、DEMと"お友達"なのですよ」
「…………」
それはドミニオン界の常識からすれば、あまりに驚くべき事だった。
ノウマンがドラゴンマスクで素顔を隠している理由も、頷ける。
カラミティーが驚いていると、骨面のメイドも話しかけてきた。
「そうそう。
 貴女が抱きしめてたあのDEMの子、弔ってきたわよん」
「……!」
ここに来て漸く、カラミティーは気絶する前のことを全て思い出した。
彼女が最期に見せた表情を思い出し、胸が熱くなる。
「トップアーツ……」
「トップアーツちゃん、って言うのね、あの子は。
 後でそこに案内したいんだけど~……えーと……」
「……何?」
三人が黙って、一様に自分に注目してるのに気付いた。
「…………?」
カラミティーが黙っていると、三人は困った様子で視線を交し合う。
結局、ルージュが代表して尋ねた。
「まずは……お名前をお聞かせ願えますか?」



こうして私は、ウォーロード家に迎え入れられた。
迎え入れられたと言うか……行き場所が無いので、居候させて貰っている訳だが。
「貴女が我々と戦うか否かはお任せします。
 ですが、ウェストフォートで暮らすなら、街を一度見ておいたほうが良いでしょう」
将軍のその一言で、私はノウマンにウェストフォートを案内してもらうことになった。

「あれが羅城門、防衛部がある場所です」
ノウマンが指差した先には、都市の上部に位置する、見上げるような巨大な門。
「 奥には防衛最高責任者殿がいらっしゃいます」
「…………」
ノウマンが案内する場所は、商店や衣料品店といった生活施設だけでなく
レジスタンス本部やシンボル発生装置、そして羅城門と防衛軍に関係ある施設も含まれていた。
むしろそっちの比率のほうが多い気すら、カラミティーはしていた。
「……ノウマン、一つ質問いい?」
そう尋ねるカラミティーは、ノーマルフォームだが水着姿でなかった。
ドミニオン軍正式採用の軍服に、厚手の軍靴。
軍服を着せたのは、怪しまれにくくするための配慮である。
全体的に黒い恰好だが、軍服の一部には赤があしらってあり、なかなかオシャレだった。
「何でしょうか、カラミティー嬢?」
ノウマンは相変わらずのドラゴンマスク。
将軍に仕える竜面執事として、そこそこ有名らしい。
「……重要機密を私に喋っていいの?」
カラミティーは当然の疑問を呈した。
イレギュラーとは言え、カラミティーはDEMだ。
ノウマンと違い、まだウェストフォート側に組したつもりはない。
「ではカラミティー嬢、一つ質問させていただきますが
 貴女はDEM軍に帰るおつもりがあるので?」
「…………ない」
イレギュラーである彼女は帰れないし、そもそも帰る気もない。
またエキドナの駒に使われるなんて、死んでも御免だった。
「……私は、何と戦うべきか、迷ってる。
 出来れば、誰とも戦いたくない」
彼女に命令する者がいない以上、彼女がドミニオンと戦う理由は、無い。
かと言って、かつての仲間であるDEMと戦うのも気が引ける。
「迷えるのは良いことです。
 迷いは『心』の栄養ですよ」
「……迷い、か……」
カラミティーには、まだ何も判断できない。
だから……この街で、もっと色々なものを見る必要があるのかも知れない。
「次、参りましょうか」
「……うん」

ノウマンは都市の外周、城壁の内側に歩を進める。
その後を、ぴったり2メートルの距離を維持して歩く。
しばらく歩き続けていると、カラミティーは足に違和感を感じた。
「…………?」
「どうかしましたか?」
何かが、足に当たったのを感じた。
足元を見ると、割れたコンクリートの欠片が落ちていた。
「……」
カラミティーが振り返ると、建物と建物の間から、小さな影が顔を出していた。
ドミニオンの子ども、まだ6歳くらいの少年だった。
方向的に考えて、欠片を投げたのは彼だろう。
彼はカラミティーをにらみ付けると、大声で叫んだ。
「DEMのばかやろーっ!死んじまえーっ!」
「!」
そして、わーっと叫びながら何処かへ去っていった。
その背中を見て、カラミティーは胸に僅かな苦しさを覚える。
「……すみません、カラミティー嬢。
 彼は恐らく、両親をDEMとの戦いで……」
ノウマンの沈んだ声が、彼女に説明した。
いわゆる戦災孤児。
そしてその原因を作ったのは、他でもない彼らと同じ種族、DEM達なのである。
「……」
カラミティーは、周りを注意して見渡してみた。
すると、壁際に座り込んだ人や窓からこちらを睨んでる人と、視線が合った。
その大半が、目が合うと顔を背けるが、中には睨み続ける人もいる。
皆、DEMとの戦いで何かしら失ってきた人々であることが、カラミティーには判った。
「……嫌われてるんだね、私」

彼女自身がウェストフォートに攻め入ったことは無い。
しかし、ドミニオンを傷つけたり殺したりした事は、何度もある。
その中には、彼らの家族も居たのかもしれない。
全て命令でやっていた……なんて言い訳は通用しない。

彼女は罪を犯したのだ。
彼女は初めて、その事実に気付き、そしてその大きさに震えた。
自分はどれだけの悲しみと憎しみを、この世に生み出したのだろう、と。

『心』が痛い。
罪の重さが、そのままのしかかってくる様だった。
これが罰なのだろうか。
謝っても、どれだけ謝っても許されない。
どうして、こんな辛いものを引き摺って生きて行かねばならないのだろう――

「どうしても、DEMに対する敵意はすぐには消えません」
ドラゴンマスクの中から、ノウマンが言う。
彼は20年間も、マスクの中からこれを見続けてきた。
彼自身ドミニオンを殺したことは無く、またDEMであることはバレていないとは言え
自分の種族が口汚く罵られているのを聞いて、常に平気でいられた訳ではない。
「……そうだね、私の罪も……」
「…………」

二人の間に沈黙が訪れた、その時。


『ヘルサバークにてDEMの大隊が確認された!
 ウェストフォート到着までの予想時間は15分!
 各軍団長ならびに兵士は戦闘配備に着け!
 民間人は羅城門へ速やかに避難しろ!』


街中に設置されたスピーカーから鳴り響く、野太い男の声。
街に出ていた人は、我先にと羅城門へと避難のために走り始めた。
「……!」
「カラミティー嬢、観光はまた今度だ!戻りますぞ!」
二人も、一目散に駆け出した。
将軍の下へ。


『DEMの大隊、現在ヘルサバークからゴールデンゲートブリッジ方面に進行中!
 到着予想時間は10分!』


ゴールデンゲートブリッジ――ウェストフォート側。
市外に下りる巨大な階段の下には、既に多くの兵士が集まっていた。
「将軍!」
兵士達に指示を飛ばしている紅髪の男を見つけ、二人は駆け寄った。
シェーラは既に到着しており、ノウマンを半目で睨んだ――ような気がした。
「遅いわよ、ノウマーン」
「来たか。
 我々はブリッジに出て敵の進行速度を殺ぐ!」
先ほどの柔和な優男は消え、そこに居たのは一人の武人。
“将軍”の二つ名に恥じない、歴戦の猛者であり兵士を導く軍師。
「陣は三人一組で矢じり型に組め。
 敵の流れを殺ぐだけで、全滅させようとは考えるな!」
ルージュは他の兵士にも指示を飛ばし続ける。
「カラミティー嬢はどうする?」
「…………」
ノウマンに問われ、カラミティーはまた迷った。
この街の人を守るために戦うことが、罪滅ぼしになるだろうか。
しかし、DEMに対して刃を向けることにも躊躇いが無いわけではない。
「カラミティー、君は積極的に戦わなくて良い」
「!」
いつの間に隣に来たのか、カラミティーの肩に手を置いてルージュが言った。
「私はノウマンとシェーラで、いつもの様に最前線で陣を組む。
 ……そのすぐ後ろで、背後を守ってくれ」
「しかし、将軍……」
ノウマンが止めに入る。
カラミティーはまだウェストフォート軍に所属した訳ではなく、戦闘は強制出来ない。
ましてや最前線での戦闘、危険過ぎる。
だがカラミティーは、躊躇う事なく頷いた。
「……私、やります」
「よし。
 それでは前線部隊、ゴールデンゲートブリッジに展開!
 この戦の緒戦、我らで華々しく彩ってやるぞ!」
戦士たちの雄叫びが、ウェストフォートの入り口に轟いた。



『DEMの大隊、間もなくゴールデンゲートブリッジに侵入!
 到着予想時間は3分後だ!
 気を引き締めろ!』



ルージュと麾下二人、そしてカラミティーは既に陣を組んでいた。
陣と言っても、ルージュが先頭、その後ろにノウマンとシェーラが並び
後ろにカラミテイーが立つといった簡単なダイヤ型の陣だ。
カラミティーは軍服姿から、いつものウェットスーツ状の戦闘スタイルにチェンジ済みだ。
「将軍、何故カラミティーを戦列に加えので?」
DEMが到着するまでの間、暇なのかノウマンがルージュに尋ねた。
「迷っているようだったから、かな」
「……」
ルージュは事も無げに答える。
「この戦いで、何か切欠を得られればいいと思ってね」
「それで最前線ですか~?」
シェーラが苦笑する。
「20年間、こうやってて死んだことがあったかい?」
「死んだら居ませんって」
彼らは20年も前から、こうやって戦い抜いてきた。
どんなに酷い惨敗の時だって、不思議と生き延びたものだった。
「それに、だ」
ルージュは振り返って、カラミティーを見た。
「彼女は強い。
 恐らく、一般型よりも、遥かに……」
「ええ、存じておりますとも」
ノウマンが請合う。
一度も戦っていないのに評されて、カラミティーは当然のように疑問に思った。
「……どうしてそう思うの?」
「強者、ってのはね、なんとなく肌で感じるものなのよん」
「……そういうものか……」
カラミティーはいまいち合点が行かなかったものの、とりあえず頷いておくことにした。
「さぁ、見えたぞ、敵が」
ルージュが地の果てを、銀のマジカルケインで指した。
歩行タイプのDEM達の横列と、その後ろから迫り来る大型機の巻き上げる砂埃が
傾きかけた日の光を反射して見えた。
「……DEMの大隊……」
敵としてDEM軍を見るのは、当然ながら初めてである。
カラミティーの呟きに、ルージュが反応した。
「それは間違いだ、カラミティー」
「……え?」
背を向けたまま答えるルージュ。
「あれはDEMじゃない、敵だ。
 あの中に、裏切り者のヒトが居たとしても、我々のすべき事は何も変わらない。
 戦争を終わらせるために、敵を倒す」
ルージュの杖に、魔力塊の光が灯る。
四人を四属性のオーラが包み込んだ。
「憎むべきは、種族でも民族でもない。
 憎むべきは、戦いを引き起こす者だ」
シェーラとノウマンが、一歩踏み出し得物を構える。
ルージュは更に杖を振るい、身の丈を超える魔方陣をブリッジ上に描いた。
機械の群れが、そこに飛び込み――

「―――行くぞ!」

爆発と轟音と咆哮。
瞬く間に、橋上は戦場と化した。





「……ごめん、遅くなった」
ウェストフォート共同墓地。
戦いから一夜明けた、朝早く。
無名の墓碑の前に、カラミティーとノウマンが居た。
トップアーツの墓である。
「……いい場所ね、ここは」
静かだ。
戦火の及びにくい区画にあるので、死者の魂が脅かされることもない。
DEMの社会だったら、死亡――破壊されたDEMは、スクラップとしてバラバラにされるか
パーツを再利用して再度戦闘や作業へと駆り出される。
死後の安寧など、誰も考えやしない。
トップアーツがここに葬られて良かった、とカラミティーは思った。
「……今日は報告がある。
 私、ここで戦うことにした」
「良いのですか?
 早急に判断する必要はありませんぞ。
 恩義を感じて、というなら我々は――」
ノウマンが口を挟んだ。
だがカラミティーは首を振った。
「……決めたんだ。
 戦争を終わらせるために戦うのが、私の出来る唯一の罪滅ぼし。
 それに――」
カラミティーは、自分の頬――DEMの証である金属製のバーを撫でる。
「……DEMがみんな……悪い奴だって思われたくない。
 トップアーツやノウマンみたいに、ヒトと共存できるDEMだって居るんだって知ってもらいたい。
 だから私は……DEMとしてこの街を守ってみせるよ」
「…………ふむ」
ノウマンは顎に手を当てて呟く。
カラミティーは墓石に向かって、手を合わせた。
「……だから、私を見守っててね」





同時刻、エミル界メリー宅。
夕飯を終えたメリーとレッドは食卓で寛いでいた。
サージャとフォリアは、何か事件があったらしく評議会に顔を出していて不在。
「いきなり寂しくなったな」
食後のコーヒーを飲みながら、レッドが呟いた。
行儀悪くテーブルに足を乗せたメリーが、何とはなしに応じる。
「そうさなぁ……
 まあ、そのうちひょっこり帰って来るだろ」
まるで脱走した猫の帰りを待つ飼い主のような口ぶりだが
内心では心配しきりである。
「親父の所に寄るよう、言っておいた方が良かったもな……」
レッドの言う親父とは、将軍ルージュを指す。
髪色以外は似ていないが、暦とした血の繋がった親子である。
「そりゃやめた方がいい。
 義父さんは今忙しい筈だ」
「ん?何かあるのか?」
テーブルに身を乗り出したレッドに、メリーが半目で応じる。
「知らんのか。
 ……まあ、一応機密か」
「だからなんだよ」
「うるさいな……」
面倒くさそうに、メリーは渋々答えた。
「一週間後に、大反攻作戦があるんだってさ」
「……なんだそりゃ」
「DEMの親玉を叩くために、一気に攻めるんだとよ。
 こっちからも四軍や傭兵軍が向かった筈――」
バンッ!
レッドがいきなり立ち上がり、テーブルを思いっきり叩いていた。
「な、なんでそんな大事なこと黙ってたんだよ!
 俺もすぐに駆けつけて――」
「キレんな阿呆」
「ぐふっ」
メリーが軽く叩くと、レッドはもんどりうって倒れた。
因みに今の両者の打撃、軽く叩いた筈のメリーの方が遥かに強い。
「親父さんの役目は陽動らしい。
 とにかく派手に暴れりゃいいだけだから、大した戦闘でもないってさ」
 まあ、レッドが行っても足手まといになるだろうし……」
「そ、それ矛盾してね?
 大した戦闘じゃないなら足手まといには――」
「その程度の戦闘でも足手まといになるぐらいに弱い、って事じゃない?」
「……」
レッドは撃沈した。
床に四つん這いになって打ちひしがれているが、メリーも慣れた事なので放っておいた。
「アニキが、上手いことその隙を突いてくれりゃいいんだがな……
 ま、なんとかなるか」




そしてその頃のアニキーは――
「うらぁぁぁぁ!」
アニキは必死に走っていた。
キラービーの峠道を駆け上がり、つり橋が落ちそうな勢いで乱暴に走り抜ける。
モースグ崖は遠回りが面倒なので、坂道を下りずに崖から飛び降りてショートカット。
「待ってろよカーネイジィィィィ!」
不運な事にこの時、坂道を地道に登っていたカーネイジ達と
行き違いになっていたのだが、三人がそれを知る由もない。
近づき、また離れていく距離。
彼らの道がまた交わるのは、随分先の事だった。

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