レッド:……え?
メリー:あ
メリー:お客さんでしたか!
レッド:え。(おいおい!?)
メリー:失礼しました。普段は顔見知りしか来店しないもんで。
レッド:あー……(ひとつ、騙してみるか)
レッド:そ、そうなんだ!
ここの女店主がいい剣を創ると聞いてね……思わず足を運んでしまったんだ。
お邪魔だったかな?
メリー:いえいえ、とんでもない。
どの様な剣をお求めですか?
どんな注文でも承りますよ。
レッド:じゃあ、この俺に似合う剣を創ってくれ……とか、駄目か?
メリー:ははは。いいですよ。
メリー:見たところ
重剣士のようですね。
カッコいいお兄さんに似合う、両手剣を創り上げて見せますよ。
料金は前払いになりますが、宜しいですか?
レッド:ああ、構わない。
(完全に俺のこと、別人だと思ってやがるな……)
じゃあ、来週あたりにまた来……
レッド:……?
メリー:じー
レッド:(おい……『俺』に見とれてるんじゃないだろうな)
メリー:あの、お客さん……
レッド:なな、なんだ?
メリー:なんで、救急ランプなんて
アホ装備してるんですか?
折角のイケメンが台無しですよ?
レッド:い、今、これしかなくてね。(今のは結構痛いぞ!)
メリー:そうでしたか。
もし宜しければ……これ、お持ち下さい。
レッド:これは……クジ品じゃないか。いいのか?
メリー:ええ。私からの、バレンタインデープレゼントだと思って受け取って下さい。
レッド:……有難く、頂戴する。(…………)
(……ぜんっぜん気がつかなかったな、メリー。
髪型と服を変えた……もとい、着ただけだっていうのに)
(それどころか……『俺』に惚れてるんじゃないだろうな。
おとめ座の麦藁帽子までくれて……
『俺』は俺だけど、だけどレッドじゃないんだぞ……?)
(……いっそ、元のレッドの存在を消して
『俺』として生きるのもアリなのか?
その方が、メリーに愛してもらえるなら、俺は……)
レッド:お邪魔します。
メリー:いらっしゃいませ!
メリー:お客さんの注文した剣、完成してますよ。
はい、お確かめ下さい。
レッド:おお……いいウリエガノフだ。
評判通りの腕前だな。
メリー:魂込めて創りましたから。
レッド:……そうか……(メリー、やっぱり『俺』の事を……?)
メリー:お気に召したなら、また来て下さいね。
レッド:あ、ああ…………ん?
メリー:どうかしましたか?
レッド:作業台の上にフランベルジュが置いてあるけど、他のも創ってたのか?
メリー:ああ、ちょっと打ち直しを終えて研磨を……
気になるなら、持ってみますか?
レッド:ああ。
よいしょ…………こ、これは……!?
(ななななんだ!?
力が……燃えるような波動が刀身全体から伝わってくる!
さっきのウリエガノフの1000倍うまく闘えそうだぜ……
ウチにこんな魔剣があったのか!?)
すげぇなこりゃ……
メリー:気に入りましたか?
だけど、売り物じゃないんですよ、すみません。
レッド:あ、そうなのか。
メリー:ええ、それは……思い出の剣でしてね。
私の…………恋人の物です。
レッド:え……?
メリー:私が初めて創った剣がそれで、
それを買ってくれたのが、私の恋人なんです。
メリー:まだブラックスミスとして未熟だった頃に創った剣だから
あまり質も良くなかったんですけどね……
彼は、それを随分長く愛用してくれて……私もその傍で、それの手入れを続けて。
いい加減限界が来て、最近はチェインソードやスタンブレイドを使わせてましたが。
で。ついこの前キレた時、思わず月面までブッ飛ばしてしまいまして。
ちょっとやりすぎたかなぁ……と思って、その剣を久々に鍛えたんです。
仲直りの印というか、長らく忘れていた純情な愛の証というか。
だけど……手遅れだったかもしれない。
あれから一週間以上経つのに、帰って来ません。
死んでる事はないと思いますが、もう、私に愛想尽かしたのかも……
レッド:
そ、そんな事ないッ!メリー:え……?
レッド:あ、いや……
じ、自分がその立場だとしたら、そう思う。
メリー……さんが、そいつの事をまだ強く想ってるなら、
その気持ちは伝わってると思うし、
それなら、絶対そいつは帰ってくる!
……根拠はないけど。
メリー:……
レッド:すまん、変なこと言って……。
メリー:いえ、有難う御座いました。
ちょっと元気出ました。
レッド:そっか……なら、いいんだ。
じゃあそろそろ帰るよ。
こんな所、恋人に見られて誤解でもされたら厄介だろう。
メリー:ははは…………あ、お客さん、待ってください。
レッド:ん?
メリー:お客さんの名前……教えていただけませんか?
えっ!?次回、急展開。
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