ああ、私、死んだんだな。
だって、首を刎ねられた筈なのに
こんなに温かくて気持ちいい…………
…………
サージャ:経過はどうだ?
フォリア:呼吸も脈も微弱です。
サージャ:辛うじて、生きてる、か……。
フォリア:でも……それでも、生きてるんです。
“彼女”の献身、無駄にならなくて良かった……。
…………
フォリア:惨過ぎる……これも邪神の……
サージャ:いや……邪神の気配が無くなったからな……
何か異常な事態が発生したのは間違いないんだが――――
ヴァルカン:誰か……誰か、いるのか……。
フォリア:!
ヴァルカン:……ドルイド、か……?。
フォリア:は、はい……貴女は……
サージャ:……その娘に宿ってたサラマンドラか。
ヴァルカン:ああ……突然で悪いのだが、貴女達にお願いがある。
彼女の体を、可能な限り修復して欲しい。
サージャ:おい、こんな事言うのも酷だが……
今更そんな事しても、生き返らないだろ……?
フォリア:ええ……肉体が死を迎えた時、魂も器を失って霧散し――
ヴァルカン:いや――
彼女の魂は、まだここにある。
私が、引き留めてるからな。
サージャ:……そんな事したら、アンタの方が先に死ぬぞ!
ヴァルカン:二人とも消えるよりは、遥かにマシだ。
それにな……まだ短い付き合いと言っても、彼女は私の主人。
そして生涯の友。
こんなところで……死なせたくないのだ……。
フォリア:……判りました……
貴女の主人の体、全身全霊をもって治しましょう……。
ヴァルカン:恩に着る…………。
…………
フォリア:確かに……彼女は、一命を取り留めました。
だけど、目が覚めて……幸せなんでしょうか。
サージャ:……。
フォリア:……私に、もう少し力があれば……
大切な物を、これ以上失わせずにすんだかも知れない。
全身全霊で、なんて安請け合いしておきながらこの様…お笑いね、フォリア……。
サージャ:……俺らの翼は、非常にデリケートな器官だ。
翼を接合できた例なんて聞いた事が無い……気にするな。
それより、昼飯でも食いに行こう。もうヒールは不要だろ?
フォリア:……傍にいてあげたいと思います。
彼女が目覚めるまで。
サージャ:……好きにしろ。
(……お人好しなこった。ま、フォリアらしいが……
……牛丼、テイクアウトしてやるか)
…………
メリー:(!!!!!!!!!)
焼けた刃で全身を余すことなく切り刻まれたような、衝撃。
光も音も自分の手足の感覚すら丸っきり感じられず
ただ苦痛が全部の感覚を支配する。
メリー:(あああああああああああああああああ!)
翼の先が、熱い。
焼き鏝を押しつけられたようだ。
そしてその熱と痛みは、やがて翼全体を覆い――
メリー:(いやあああああああああああああああああ!)
助けて……レッド、兄さん、ヴァルカン……
メリー:ううう、あああああ……!
フォリア:意識が覚醒に向かってる……けど、肉体に不備があるから……
ごめんなさい、私が、未熟なばかりに……。
(私には、もう手を握ってあげるぐらいしか出来ないけど……)
(頑張って、メリーさん……)
メリー:(…………!)
突然だった。
初めて、苦痛以外の感覚を得た。
左手。
太陽に手を翳しているかのような温もりが、手の甲に現れた。
メリー:(…………これは…………手?)
同時に、夢と現実の境が明確になってくる。
左手に、誰かの手が重ねられ、私の掌を握っている。
メリー:(誰……誰なの……?)
レッドでも兄でも無い。
もっと柔らかくて、小さい。
きっと私の知らない人の手だ。
だけど、誰が……?
知りたい。
今の私を、支えてくれようとしている人を。
メリー:(貴方は……貴女は……)
未だに続く痛みの中、力を入れて瞼を上げる。
そして私は、左手の先に座る
フォリア:あ………!
“女神”と目が合った。
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