メリー:はぁー……。
寒くなってきたな……身も心も懐も。
私が地上で生活を初めて、既に半年が経過していた。
兄とは……同じくらい、逢っていない。
知らない人に囲まれての一人っきりの生活は
味気なく、つまらなく、そして寂しいものだった。
だが、私を拒絶した兄の下には戻れなかった。
涙を堪えて岩を叩き
修理キットを製造し販売して生計を立てる日々。
夢も、希望も、将来も、無縁。
何で私、生きてるんだろう。
そんな事すら考えていた、ある秋の日の事。
…………
メリー:(あ、修理キットの募集めっけ)
……
メリー(Wis):こんにちはー。金属修理キット銀、お売りしますよ。
???(Wis):おお、有難う。ダウンダウンの武器屋前でいいかい?
メリー(Wis):はいー。
…………
メリー:お待たせしましたー。耐久19で宜しいですね?
???:おっ、有難――
!!!!メリー:ど、どうしました……?
???:あ……い、いや、その……あああ、お代ね、はい。
メリー:?
有難う御座いましたー。また機会がありましたら宜し――
???:あああああのっ、あのさ!
メリー:?
???:なんだ、その……め、メリーさんってさ!
メリー:……?
???:えーと、えー……あ!
かっ、かかかかかか可愛いですねっ!
メリー:…………はいぃ!?
紅の鎧と赤髪紅眼、そしてそれに負けないくらい、赤面していた青年。
それがレッドの第一印象だった。
今思うと、可愛いのはどっちだ、って感じだ。
…………
ザシュッレッド:--って事があったんだよ。よっと。
メリー:ふぅーん、レッドさんって、やっぱり変わってますよね。
レッド:そうか?よく言われるんだが、自分じゃさっぱりだ。
メリー:そういうところが、変ってるんですよ。
……あ、誉めてますよ?
それからと言うもの。
レッドから、よく狩りのお誘いを受けるようになった。
私は戦闘面はからっきし駄目だったのだけど
『テントやエキスパンドでサポートしてくれるだけでも助かる』
というので、胸アクセに憑依していた。
まあ、私ひとりでは、いつまで経ってもLv上がりそうに無かったし。
それに……変わってるけど、嫌な感じは受けなかったから。
メリー:もっと大事に扱わないと駄目ですよ。
レッド:す、すまん……つい、張り切っちまってな。
優秀なサポートもいる事だし。
メリー:んもう、お世辞言っても無駄ですよ。
武器も体も大事にしないと、一流の剣士になれませんよ。
レッドは前線で戦闘、私はそのサポート。
いつしか、そんな関係が生まれていた。
まだ、恋人らしい間柄だった訳じゃない。
だけど、私は幸せで―――
もう寒くなかった――。
…………
レッドと狩るようになって、およそ半年――
ある春の日、私たちはサウスに向かった。
レッドはブレイドマスターに
私はブラックスミスになる為に――
サラマンドラ:体に宿すための、マリオネット・サラマンドラは?
メリー:はい、ここに――
レッド:あ、待ってくれないか。
レッド:このサラマンドラを、使って欲しいんだ……。
メリー:え?レッドさん、サラマンドラ持ってたんですか?
レッド:ああ。メリーと一緒に狩るようになる前は
毎日のように使っていたんだが……。
サラマンドラ:……良かろう。
ホムラ様、この者に力を――
レッドのサラマンドラ:……こうして話すのは、初めてだな。
レッド:ああ……お前は、怒ってるだろうな。
レッドのサラマンドラ:…………。
レッド:さんざん酷使して、メリーと一緒になった途端カバンの奥にしまい込まれて
挙句の果てには、メリーの転職の為の贄にされるんだから。
レッドのサラマンドラ:……いい気はしないな、確かに。
レッド:御免……だけど、これだけは約束する……。
レッド:お前がメリーに宿った後も……
俺は……ずっと、ずっと、メリーの中のお前と一緒だ!
メリー:(…………え?)
レッド:だから、もう前みたいに一緒に戦う事は出来なくても
傍で俺を……俺たちを、見守り続けてくれ。
メリー:(レッドさん、それって……)
レッドのサラマンドラ:…………。
レッドのサラマンドラ:つくづく熱い男だな、お前は。
ま、いいだろう……お前の言葉を信じて、その娘とお前を加護しよう。
レッドのサラマンドラ:娘……ああ、メリーと言ったか?
メリー:は、はい……。
レッドのサラマンドラ:と言う訳で、私はお前と契約し、お前の一部となる。
……ひいては、名が欲しいのだ。
メリー:名前?
レッドのサラマンドラ:これは決まりのようなものでな。
契約には名が必要なのだ。
メリー:……レッドさん、決めますか?
レッド:……そうだな……なら、俺の好きな神話の火神の名を取って――
――Vulcan――メリー:いい名前ね……
ヴァルカン:ああ、いい名だ……
((有難う、レッド))
…………
レッド:うーん……見事な夕日だ。
二人とも転職試験終わったし、今日はいい日だな……。
メリー:……。
あの、レッドさん。
レッド:……何だ。
メリー:さっき、ヴァルカンに言ったのは……
レッド:…………
……ああ、本当に綺麗な夕日だ。
メリー:……。
レッド:俺さ……メリーと…………
ずっと一緒に、この夕日を見ていたいんだ――――メリー:……!
今考えれば、笑っちゃうような気障な告白。
だけど、私を落とすには――
十分過ぎる、一撃だった。
…………
…………
レッド:ふー……。
メリー:~♪ねぇ、レッドさん。
レッド:呼び捨てでいい、って言ったじゃん。あと敬語も駄目だって。
メリー:あ、御免。
レッド:それで、何だメリー?
メリー:今、レッドは幸せかなって。
レッド:ああ……これ以上幸せになったら死ぬってくらいにな。
メリーはどうだ?
初めてを終えた感想は。
メリー:え゙。
レッド:ほらほら、今後の為にぜひ聞かせてくれよ。
メリー:こ、この助平剣士が……!
……でも、そうだね……
考えないとね、今後の事。
レッド:あらら、シリアスモード入ったか。
メリー:ふざけてる場合じゃないよ。
私たち、タイタニアとドミニオンなんだよ?
レッド:判ってる……この先、果てしない障害が待ってる事くらい。
だけど――
二人でなら、乗り越えて行ける……俺はそう思う。
メリー、サウスに戻ったら、俺の為に一本剣を打ってくれ。
ブラックスミスなら、製造許可が出てるだろう?
メリー:造る事は出来るけど……初めてだし、いい剣は――
レッド:いいんだ。お前が初めて打つ剣で戦える……
それだけで、俺は負ける気がしないんだ。
だから、頼むよ。
メリー:……うん、判った!
…………
そして、私は剣を打った。
レッドへの愛の証として。
私達の将来の為に。
全てを、この一本に賭ける――
そして、完成した。
私とレッドの未来を切り開き
幸せへと導く剣
――グリランドリー――
そして
悲劇は幕を開ける――。