???:ふんッ!
???:強制憑依!
グギュゥゥゥゥゥ……
???:こんなもんでどうだ、リン?
リン:うん、この数の魔物なら、まず負けないと思う。
レッド:そうか……いよいよ、だな。
待ってろよ、リン……お前に、人の肉体を……
お前だけの体を与えてやる――
リン:…………うん…………
???:この世界に、『俺達』は一組だけでいいんだ……!
…………
フォリア:(サージャさんが帰ってきたら、お夕飯の買い物でも行こうかな。
あ、ついでに洗剤とお米も持ってもらおっと)
サージャ:おい、フォリア!
フォリア:あら、おかえりなさい。夕飯は何がいいですか?
サージャ:そーだな、寒くなってきたしボルシチでも――
……いや、そんな悠長なこと言ってる場合じゃないんだ。
フォリア:?
サージャ:メリーさん達はどこだ?
フォリア:先ほど、二人で出掛けましたよ。
今頃、二人っきりで思いっきりイチャイチャしてるんだろうなぁ……。
サージャ:どこら辺にいるか判るか!?
フォリア:レイヤーに行くとか言ってたので、今頃は天塔じゃないですかね。
サージャ:よし、モーグ炭取って来い!急いで追うぞ!
まだ何事も無ければいいが……。
フォリア:え、ちょ、ちょっと待って下さいよ?
一体何があったんですか?
サージャ:何もこうも無い……あの剣はまだメリーさん達を狙ってるかも知れないんだ!
フォリア:剣…………まさか…………!
サージャ:そうだ、グリランドリーと……もう一人のレッドだ……。
…………
レッド:そうだメリー、水着持ってきたか?
メリー:……12月なのに泳ぐ気?
レッド:レイヤーは年中暖かいぜ。
持ってきてないのかよ?
メリー:当たり前でしょ。
レッド:残念だな……お前の水着姿、楽しみだったのに……。
メリー:もしかして、水着目当てでレイヤーに?
レッド:いや、お前と行けるならどこでも良かったんだが…
ついでなら色っぽい格好も見てぇな、っと。
メリー:全く……本当に助平なんだから…。
レッド:お前が可愛いから仕方がないっ!
メリー:誉めるフリして責任転嫁するんじゃないっ!
……
???:――見てて腹が立ってくるな。さっそく殺るか。
リン:う、うん。
――――暴竜、リリース。
???:女は傷つけないようにな。
リン、お前の体になるんだから――。
レッド:ん、何だこの足音……?
メリー:レッド、前!
!?
メリー:レッドー!
レッド:ぐ…………ってぇなあこの野郎……!
メリー:(マズい、ワイルドドラゴは私達二人じゃ荷が重い……)
(だけど、なんでこんなところに……!?)
メリー:来い!貴方の相手は私だ!
レッド:ま、待てよ……。
レッド:お、おいドラ公!今のは……不意打ち食らっただけだ!
正面からかかってきやがれ!
メリー:格好つけやがって……。
???:威勢だけはいいな……だが、お前のような不完全なヤツに
愛する女を護る力など……有る筈がない。
…………
執事風の男:将軍、ポイントA-3、地上部にて戦闘中の模様。
給仕風の女:数名の他、大形獣一体の存在を確認~。
あのエリアにモンスターはいないのに……迷子かしらん?
???:念の為、出向くとしましょう。お二人も戦闘準備を。
男&女:はっ!
執事風の男:ウェストフォート防衛部総本山「五大頂」が一、“
将軍”ルージュ様、出撃!
給仕風の女:おーっ!
ルージュ:有難う――……早く参りましょう。
…………
フォリア:おおよその事情は判りました。
だけど……なんで、メリーさんが襲われると?
サージャ:これは俺の予想なんだが――いいか?
フォリア:どうぞ、聞かせて下さい。
サージャ:まず、グリランドリーがSUに狙いを絞って襲撃をかけてる点。
恐らく、破損したグリランドリーの修復と精神の維持に必要な魔力を手に入れる為だ。
あの剣は100%フィジカルな物ではなく、半分くらいはメンタルな存在のようだからな。
フォリア:でも、以前は3年近く休止してたんですよね?
サージャ:あの、名も無い邪神の魔力を利用してたんだろう。
初めは残存魔力で食い繋いでたが、足りなくなって人から奪う事にした…ってところだろうな。
そして、もう一つ。
ジジイは、グリランドリーが“強力なモンスター”を狙って大暴れした、って言ってた。
これは別に犯罪でも何でも無い訳だけど……
腕試しやクエ品集めをしてた訳でもあるまい。
何か理由がある、そう考えるべきだろう?
フォリア:……魔力を奪う為じゃないんですか?
サージャ:そういう理由も、あるにはあるだろう。
だけど、ジジイに貰った資料では、魔力をあまり持たないメカ系も
かなりの数がグリランドリーの餌食になってたんだ。
フォリア:……そうか、強制憑依……!
サージャ:うむ。強力なモンスターを選んで、グリランドリーは
“自分の中に閉じ込めている”
恐らく、自らの戦力とする為にな。
――で、グリランドリーが何か目的を持って襲うとしたら
考えられるのはメリーさんとレッドしかいない。
フォリア:復讐?それとも目障りだから?
サージャ:そんな実の無い事をする程、馬鹿な連中には見えん。
多分、グリランドリーに器を与えるためだな。
フォリア:器……それって……
サージャ:ああ……グリランドリーの精神に適合する肉体と言えば、一人しかいない――。
アイツ……今度はメリーさんの体を乗っ取るつもりらしい……。
…………
レッド:ぜーっ、ぜーっ……な、何でこんなところにワイルドドラゴがいるんだよ……。
メリー:知らないわよ……大丈夫?
レッド:あ、ああ……ちょっと掠っただけだ……。
???:女に護られるとは……無様だな、欠陥品。
メリー:!?
レッド:だ、誰だお前は……!
メリー:そ……そんな…………
???:何も知らんようだな……そっちの女は気付いてるようだが。
レッド:メリー……?
メリー:何故、戻ってきた……!?
今更、一人のレッドに戻ろうというの?
それなら容赦は――
???:そんな恥の塊みたいな馬鹿男に用は無い。
邪魔するなら殺すが。
レッド:な、何だとこの野郎!ちょっとイケメンだからっていい気になりやがって!
俺にはちゃんと、レッドって名前が――
???:知ってるよ。俺も……いや――
俺こそが、本物のレッドなんだからな。