レッド:(体が……動かない!?)
フォリア:メリーさん、この槍は……。
メリー:説明は後だ!グリランドリーを全力で叩く!
レッド:(や、やめて!!そんなことしたらレッドが……!)
メリー:砕けろォォォォォ!
レッド:あああああ!
メリー:!?
フォリア:な……!?
レッド:ぐ…………き……効いたわよ、今のは……
ちょっとだけ、刀身が曲がったじゃない……だけど、判ったでしょ。
メリー:……ただレッドを操ってるだけじゃないのか……。
レッド:そうよ。
この肉体は、魔力で形成した仮初めの体。
『本物』のレッドの肉体も精神も、刀身に居るのよ。
つまり、憑依状態、って事ね。
メリー:……そうか、憑依中の武器を攻撃したら……
レッド:私に『憑依』しているレッドにダメージが行く……
私を壊すほどのダメージが行けば……レッドは絶対に死ぬわ。
フォリア:そんな……!
レッド:これで判ったでしょ?
貴女は、永遠にレッドを取り戻せないのよ!
フォリア:……人質、ですか。
レッド:そうとも言うわね。
でも、私の要求は簡単よ。
私達を、追わないで。
もうレッドは死んだと思って、新しい人生を生きなさい。
…それが私の慈悲よ。
メリー:くっ……勝手な事を!
フォリア:メリーさん……。
メリー:一旦、体勢を立て直そう……きっと、方法はある……。
レッド救出はふりだしに戻った。
物理的にグリランドリーを破壊する事は出来ないと判った以上
拳と鎚で戦う私には、なす術が全く無かった。
しかし落ち込んではいられない。
私は打開策を求め、兄を訪ねた――
メリー:書から学べ、ったって……
こんな厚い本読むなんて、久々な気が……。
ウォルス:ここにあるの全部読破したら
セージマスターから、本棚数架分借りてくるから。
メリー:うう……。
いつからこんな、頭脳労働が苦手になったんだろう……。
ウォルス:頑張ろっ。レッド助けるためでしょ。
メリー:うん……あー、兄さん、このスペルなんて読むの……。
ウォルス:(……フォリアさんと交代させた方が賢明だろうか)
…………
サージャ:んー…難しい事になったなぁ。
フォリア:サボってないで、そっちのトルクレンチ取ってください。
サージャ:はいはい……。
しかし、こればっかりは、俺みたいに力で捩じ伏せるタイプには
どうしようもないしな……せいぜいレッドテイルの修理をするぐらいか。
フォリア:…………。
サージャ:手が止まってるぞ。
フォリア:サージャさんもね。
サージャさん、実は術使えますよね?それも高位魔術が。
サージャ:何の事だ。ああ……基盤コゲてら……。
フォリア:私を遠距離転位させましたね、昨夜。
サージャ:あれは大した術じゃない。手品みたいなもんさ。
フォリア:…………。
そうやって……いつもはぐらかして、ヘタレなフリをして、女の恰好して……。
サージャ:女装でもいいだろ、別に。
俺は美しすぎるからな……野郎用の服を着せておくのは勿体ない。
フォリア:…………。(何割ぐらい本気で言ってるんだろ)
サージャ:そう言えば……その槍はどうした?
フォリア:ああ、これは……。
メリー:最初の姿を見ただろう。
あの見た目通り……その槍は植物のように“生長”するんだ。
持主の危機を感じ取り、それを栄養にしてな。
サージャ:……また危なげな武器を。
フォリア:大丈夫ですよ。これは私がちゃんと管理しますから。
サージャ:……だから怖いんだよ。
フォリア:……何か言いました?
サージャ:い、いや、別に……な、何かパワー貯めるなー!
…………
ウォルス:こ、これは……!
メリー:ん?どしたの兄さん。
その薄汚い本に何か書いてあった?
ウォルス:『人の創造物のみ破壊する力』に関する記述があったんだ……
メリー:!
メリー:……ごめん、これ何語?
ウォルス:ナアカル・コード。
メリー:……神官文字なんて読めないよ。兄さん訳して。
ウォルス:はいはい、えーっと……
――かつて、邪悪なる神の力あり――
――生命に一切危害を加えぬ代わりに、人の産み出した物を尽く破壊す――
――その神、桃色なる獣の姿を借りて人前に降りん――
――その力……人はこう呼び、恐れ敬った――
――クホ、と――