それから――私達の新しい生活が始まった。
レッドはウチに住ませる事にした。
事情を知る皆は、誰も反対はしなかった。
フォリアとサージャは相変わらず
漫才しながら魔物や邪神を狩っていた。
私は武器防具の準備、という形で二人を手伝っている。
クホホ・クォーターズは解散。
こんな危険な戦いに協力してくれた3人は、ロクなお礼もさせてくれないまま帰って行った。
精錬成功率が極端に下がる副作用には、まだ気づいていないらしい。
いつか落ち着いたら改めて礼に行かねばなるまい。
結晶を手土産に。
一方クホホテップは、懲りずにフォリアの父や居候達を集めて
再度クォーターズを結成していた。
私の手の甲には、パワー・オブ・タタラベの紋章が残ったままだ。
……アルベルトでも勧誘してくれ、と切に願う。
レッドは――みんなに見守られながら、順調に回復した。
兄さんが時々来て色々と教え込んでるし
似た境遇の御影さんとも、たまに話している。
フォリアも定期的に診察してくれる。
サージャは……下らないことを吹き込んでいる。
私は殆どレッドの傍で過ごしていた。
他愛もない会話をして、一日を過ごす。
昔の記憶は……本当に全く残ってないようだ。
記憶だけでなく、様々な面に欠陥は見られた。脱衣癖とか。
だけど、レッドは前と変わらず、温かくて、優しくて、格好良かった。
レッドの中で、一番好きな部分が残っていたから、私は何も悲しくは無かった。
そして、翌年の春、4年前と同じ日――――
私たちは再び――――
もう一組のメリーとレッドも
どこかで、二人一緒に幸せになってくれていればいい。
今では、心からそう思えた。
サージャ:ジジイ、用って何だ?
セージマスター:ジジイと呼ぶでない。お主の方が何千倍もジジイじゃろうに。
サージャ:太祖や旧神や魔導書絡みかジジイ?
セージマスター:…………。
はぁ……相手は人じゃ。
サージャ:……人?
仕事回してくれるのは有難いけど、弱っちい相手は勘弁だぞ。
セージマスター:強いか弱いかは微妙なところじゃが…お主はこの依頼を受けねばなるまい。
……これが、そやつの写真じゃ。
サージャ:どれどれ――
……
レッド:たまには遠くに出掛けようぜ。
遺跡ばっかじゃ健康に悪いしな。
メリー:それは構わないが、まず服を着ろ。話はそれからだ。
レッド:はいはい。ウォーターレイヤーとかどうよ?
フォリア:いいんじゃないですか?
たまには、二人っきりでゆっくりして来るといいと思いますよ。
メリー:あれ、フォリアは来ないのか。
フォリア:
馬に蹴られて死にたくありませんから♪
…………
サージャ:……髪型は変わってるが…アイツに間違いないな。
で、コイツがなんだってんだ。辻斬りでもしてんのか。
セージマスター:うむ。今月に入って6人が襲われた。
サージャ:な……マジか!?
セージマスター:どうやら、魔力が目当てのようで、何れの被害者もそれなりに手練のSU。
手口は、剣の切っ先を僅かに突き刺し、魔力を吸収。
サージャ:肉体まで吸われなくて良かったな。
セージマスター:だいぶ前から、辺境の地で強力なモンスターに狙いを絞って大暴れしていたようじゃ。
理由は知らんがな。
幸い、被害者がSUばかりという事で、ワシのところで話を止めてある。
だが……そろそろ評議会も軍も気付くかもしれん。
そうなると……君の友人にも捜査の手は伸びるじゃろう。
全ての経緯が明るみに出るのも時間の問題じゃな。
サージャ:……キツいな。表沙汰に出来ない要素が多過ぎる。
セージマスター:うむ、ワシとしても、あまり軍に邪神とか魔剣とか知られとうない。
サージャ:……任務、了解した。
早急にコイツを探し出して――
――始末する。